前回までの継手解説シリーズで取り上げた中の「フランジ」について個別に解説します。
フランジはその中でさらに細分化されており、それぞれの特徴を理解して使用する必要があります。
フランジに関する解説は、2回に分けて投稿します。
前編である前回は、配管との接続方法に応じた種類と特徴についてまとめました。
フランジ以外の継手全般を広く解説した、前回記事は以下になります。
今回(後編)は、フランジの座面の種類とガスケットの関係について解説します。
座面の特徴は、適応するガスケットおよびフランジ継手部の耐圧性/漏洩防止に直結します。
それぞれの機構を十分に理解して、適正なフランジ座を選択する必要があります。
全面座(Flat Face / フラットフェイス)
フランジ面の全面がシール面となります。
ボルトの締結力を、フランジ面全体で分散するので
後述する平面座(レイズドフェイス)よりもシール性に劣ります。
よって、高圧ラインでの使用には不向きです。
ガスケットもフランジ面全体がアタリ面となる、全面座用ガスケットを用います。
(参考 : ニチアス株式会社 ガスケット製品カタログ)
ゴムやシート製のガスケットは、大きい一枚のシート/ゴム板から打ち抜き機で切り出した「打ち抜きガスケット」か、
一体成形品として製造される「成形ガスケット」の2種類があります。
後者の一体成形ガスケットのうち、ゴム製のものは
・外に出っ張ったタグがあり、EPDM、PTFEなどの材質が表記されており
誤使用防止や施工後のチェックが容易になっている。
・中央部に止水性向上のための凸リングが設けられている。
ということがメリットとして挙げられます。ただし、打ち抜きガスケットよりコストはUPします。
(参考 : 旭有機材株式会社 配管材料案内)
平面座(Raised Face / レイズドフェイス)
管内中央部が出っ張っており、そこがシール面となります。
FF座よりシール面積が少ないため、ボルトの締結力が集中して効くので
より高圧なラインでも採用することができます。
ガスケットも、アタリ面が管内部中央だけになるので、ボルト穴のないリング形状のものを用います。
配管の中央部にセットし易いように、耳(ハンガー)付きのものもあります。
(参考 : ニチアス株式会社 ガスケット製品カタログ)
また、負圧になることが想定されるラインの場合、
リングガスケットだと管内にガスケットが引き込まれる恐れがあるため、
平面座であっても、ガスケットはボルトにかかりが生じる全面座を使用することが推奨されます。
(参考 : ニチアス株式会社 よくあるご質問-ガスケットに関するご質問)
ニチアスのカタログでは、平面座フランジに全面座ガスケットを使用することや
逆に全面座フランジにリング状ガスケットを使用することも可能とされています。
しかし、最小締付トルク x 許容締付トルク の値がメーカ資料と異なる状態で
通常と異なる管理が必要となるため、やむを得ない場合を除き、原則として避けた方が賢明です。
はめ込み座(Male and Female / メールアンドフィメール)
みぞ形座(Tongue and Groove / タングアンドグルーヴ)
木造建築でもちいられる「さねはぎ」継手がその名の由来です。
凹凸の溝を組み合わせることで接合します。
(参考 : 株式会社LIXIL リフォーム 実はぎ(さねはぎ)とは)
ガスケットは平面座と同様リング形状で、T&G座の嵌め合い部の内側に設置します。
M&F座よりもシール面積が狭いため、より締付トルクが効きやすく、高圧・真空ラインに適用します。
(参考 : ニチアス株式会社 ガスケットNAVI)
リングジョイント座(Ring Joint / リングジョイント)
T&G座と同じように溝が切ってありますが、凹凸部を嵌め込むT&G座に対して、
リングジョイント座は、溝にはまるリングジョイントガスケットを介して
お互いに溝のあるリングジョイント座同士を締結します。
(参考 : 株式会社フタワフランヂ製作所 カタログ)
溝に入れるリング状のガスケットは、
楕円形/オーバル断面 と 八角形/オクタゴナル断面 を使い分けます。
オーバル断面のものは、シール接触面積が小さくなるためより気密性が上がりますが、
締結時に押し潰されるため変形します。原則、再利用は出来ません。
オクタゴナル断面のものは、シール接触面が面対面になるため、オーバル断面より気密性で劣ります。
しかし、締付トルク値が管理された状態で、溝部とリングガスケットがお互いに傷が無ければ、再利用が可能です。
(参考 : 株式会社バルカー メタル・セミメタリックガスケット)
まとめ
各フランジについて、座面の種類と特徴・ガスケットの関係をまとめました。
全面座(Flat Face / フラットフェイス)
平面座(Raised Face / レイズドフェイス)
はめ込み座(Male and Female / メールアンドフィメール)
みぞ形座(Tongue and Groove / タングアンドグルーヴ)
リングジョイント座(Ring Joint / リングジョイント)
前編の配管との接続方法、後編の座面の種類を抑えればもうフランジ継手は怖いものなしです。
さらに流体に対する、ガスケットの耐熱・耐食性を踏まえれば、フランジ継手からの漏洩防止は完璧です。
それではまた次回、⛑ご安全に!⛑
各フランジの規格の確認のために、
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