まずはここから!スチームトラップの種類と特徴

プラント設計情報

蒸気を扱うプラントでは、熱エネルギーの効率化や回収のために蒸気配管内の凝縮水管理が不可欠です。
スチームトラップはその重要な役割を果たし、適切な使い分けが必要です。

この記事では、スチームトラップの基本から使い分けまでを、初心者でも理解しやすいように解説します。
さらに、メーカ情報を交えながら、各種タイプの特性についても紹介します。

スチームトラップとは

蒸気は高温高圧下で水を気体にしたものですが、 蒸気配管内には配管放熱によって凝縮水が発生してしまいます。
凝縮水が系内に滞留していると、以下のようなトラブルが発生します。

 ①熱交換器内に凝縮水が断続的に流入して、加熱能力に不足やムラが生じてしまう。
 ②凝縮水と蒸気の接触で、スチームハンマーが生じてしまう。

 ③凝縮水を系外排出するだけだと、プラント全体で見た
とき熱エネルギー損失となる。

これらのトラブルを防止するため、蒸気配管には一定の凝縮水を排出できるように
スチームトラップを設置する必要があります。

スチームトラップの取付位置

凝縮水は配管の底部に滞留するため、管底からスチームトラップ用の分岐を取り出します。
この時の注意点は、凝縮水の排出量が分岐配管口径・スチームトラップ排水能力を合致させることと、
スチームトラップに異物が混入しないようにすることです。

後者については、蒸気用ストレーナを設けるか、ドレンポットを設けてゴミを溜める方法があります。
Yストレーナの場合は、排水用のように縦向きに取り付けてしまうと凝縮水が溜まってしまうため
横向きに取り付ける必要がある点に注意です。ストレートタイプのストレーナの方凝縮水が溜まらないのでベターです。

参考 : 株式会社ベン 【ストレーナ】ストレート形ストレーナKT-8CN,8PN型のご紹介

ストレーナを設けた場合は定期的なストレーナの清掃・交換が必要になるため
スペース上の余裕がある場合はドレンポットを設ける方がリーズナブルです。

また、以下のような場所にもスチームトラップを設ける必要があります。

①制御弁や減圧弁の直前
 凝縮水が溜まると作動不良を起こすリスクがある。
 また、スチームハンマーが機器にダメージを与えてしまう。
②配管の立上げ・立下げ箇所
 凝縮水が一定量の水塊として存在すると、栓のようになってしまい
 蒸気の流れがせき止められてしまう。

メカニカルタイプの種類と特徴

スチームトラップ内に凝縮水を溜めて、
その浮力を利用するタイプにフロート式バケット式の2つがあります。

いずれもトラップ内の内部機構が浮力で上下するため、
水平配管・縦配管に付ける場合でそれぞれ専用の型式を選定する必要があります。

バケット式

バケット(逆さまにした桶)が上下することで凝縮水を排出します。
バケットの上げ下げで排出口が開閉する間欠排出のため、過熱蒸気系統のように凝縮水量が少ないと
バケットが浮き上がらず 蒸気だけが漏れ続けてしまう場合があるため、注意が必要です。


(参考 : 株式会社テイエルブイ スチームトラップの基本 メカニカルトラップ

参考 : 株式会社 ミヤワキ 【スチームトラップ作動アニメーション】下向きバケット式|ESシリーズ

フロート式

ボールタップのようにボールフロートが上下することで凝縮水を排出します。
フロートが少し浮くだけで、凝縮水排出口が空くため連続排出が可能です。
バケット式と異なり過熱蒸気系統のように凝縮水量が少ない場合でも適用できます。


(参考 : 株式会社テイエルブイ スチームトラップの基本 メカニカルトラップ

参考 : 株式会社 ミヤワキ 【スチームトラップ作動アニメーション】ボールフロート式|Gシリーズ

サーモダイナミックタイプの種類と特徴

ディスク式

トラップ内部を流れる蒸気・凝縮水の圧力変動を利用して
ディスクを開閉させる
ことで、凝縮水を間欠排出します。

メカニカルタイプと異なりサイズが小さいため、設置スペース面で有利な一方、
ディスクが浮いたスキマが排出流路なので排出できる量が少ない点と
ディスク部分の損耗や異物混入で、ディスクが閉まり切らず蒸気漏れが生じる点がデメリットです。

参考 : 株式会社 ミヤワキ 【スチームトラップ作動アニメーション】ディスク式|Sシリーズ

サーモスタティックタイプの種類と特徴

バイメタル式

温度の変化によって形状変化するバイメタルを使用します。
バイメタルが熱膨張することで、流路を開閉して凝縮水を排出します。

ディスク式同様、メカニカルタイプよりは排出量は少ないです。
バイメタル式は凝縮水の有無に関わらず、トラップ内部が所定の温度になると作動するため
作動温度よりも低い飽和温度となり得る蒸気系統で使用すると、
蒸気が漏れ続けることがある
ため注意が必要です。

逆に、一定の温度にならなければ排水しないことを利用し、
凝縮水配管を蒸気トレース・温水ヒーターのように使用するケースもあります。

(参考 : 株式会社テイエルブイ スチームトラップの基本 サーモスタティック・スチールトラップ(バイメタル式)

参考 : 株式会社 ミヤワキ 【スチームトラップ作動アニメーション】温調式|TBシリーズ

まとめ

それぞれの作動比較動画もありましたので、ご紹介しておきます。

参考 : 株式会社ベン 【スチームトラップ】スチームトラップ作動比較

スチームトラップは蒸気配管の安定運転に欠かせない装置です。
適切な取り付け位置や選定は、トラブル防止に直結します。

メカニカルタイプやサーモタイプなど、
各種タイプの特徴を把握し、プラントの適切な運用に役立てましょう。

それではまた次回、⛑ご安全に!⛑

蒸気やスチームトラップについて、詳しく勉強したい方には以下の書籍がオススメです!
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マコト

産業系(食品加工/製鉄/特殊金属加工/電子部品/半導体)、化学系(化学製品/火力発電/バイオマス発電)、環境系(産廃処理/下水処理)など、多岐に渡る業界のプラントで、設計・施工管理・試運転・保守管理の業務全般を経験したプラントエンジニア。
様々な視点から、プラントエンジニアやプラント業界に関わる方にプラスとなる情報を発信したいと思います。

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