まずはここから!主な配管材料の種類と特徴

プラント設計情報

 プラントを人体に例えると、配管は血管のような役割を果たしています。
 人体と同じく、配管が漏洩したり閉塞したりするとプラントは本来の機能を発揮できません。

 配管設計はプラントの要所のひとつです。
 今回はその材料選定のために各配管材料の特徴についてまとめました

 個別に深堀りはせず、主なラインナップと主要メーカーの技術資料を紐づけた
 新卒入社~3年目くらいの方を対象にした内容です。
 ここでは、樹脂製配管 と 鋼製配管 に大きく大別しました

 (製造方法による特徴・使い分けなど、個別の深堀りはまたいずれ

樹脂製配管

まずは、樹脂製配管の主な特徴です。

 メリット:耐食性が高い、鋼管に比べ単価が安い、軽くて施工性が良い
 デメリット:耐熱性が低い、屋外では紫外線劣化*1の懸念がある、高圧には使えない
 その他留意点:低温環境での接着作業時に、ソルベントクラック*2による品質不良のリスクあり
        気体透過性が高いことにも留意が必要

 (参考*1:公益財団法人 水道技術研究センター 硬質塩化ビニル管を露出配管する上での注意点と対策
 (参考*2:株式会社 クボタケミックス ソルベントクラックについて教えてください
 (参考*3:株式会社ミスミグループ本社 樹脂の気体透過性



続いて、樹脂配管の種類とその特徴です。

・VU:硬質ポリ塩化ビニル管の薄肉管 Vinyl Usuniku
 無圧のドレン配管や、低圧のライン向け。VP管よりも薄肉(Usuniku の U です。センス・・・)。
 一般住宅などで使用されることが多く、プラント配管で使用される範囲は少ない。

・VP:水道用硬質ポリ塩化ビニル管 Vinyl Pipe
 VUよりも肉厚があるため、圧力配管でも使用可能。


・HIVP:水道用耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管 Vinyl Pipe High Impact
 プラント配管として用いられる樹脂管としては最も多い。
 前述のVPより耐衝撃性は低いため、プラント配管ではウォーターハンマー等の衝撃が
 生じる可能性がある有圧配管で使用される。
 (よく誤解されがちなのは「耐圧性」ではなく、「耐衝撃性」が高い)

・HTVP:水道用耐熱性皇室ポリ塩化ビニル管 Vinyl Pipe High Temperature
 VPより耐熱性に優れる。熱収縮による変位量はエキスパンション*4による吸収が必要。
 使用温度によって耐圧性も変わる*5ので注意。

(参考*4:積水化学工業株式会社 エスロンHTパイプ カタログ

(参考*5:旭有機材株式会社 ASAHI AV スーパーパイプ カタログ

・PVDF:フッ素樹脂管(ポリフッ化ビニリデン)
 耐食性、耐熱性ともに優れるが、高価。
 多くの薬品に対する耐食性があるため、高腐食性の薬品・廃液のラインで使用される。
 材料からの溶出も少ないので、半導体・医薬・食品プラントなどの超純水ラインでも使用される。

金属製配管

金属製配管の特徴は
 メリット低~高圧、低~高温のラインに幅広く対応する
 デメリット:樹脂製配管との比較で

      施工性に劣る(溶接、ネジ接続などの二次加工が手間)
      耐食性に劣る(メッキ、SUSなど防食管もあるが割高)
 その他:耐圧性と耐食性を兼ね備えるライニング鋼管もあるが、
     耐食性と加工性・コストがトレードオフになる

続いて、鋼製配管の種類とその特徴です。

・SGP:配管用炭素鋼管 Steel Gas Pipe
 亜鉛めっき処理なしの鋼管で、「SGP(黒)」「黒ガス管」などと称される。
 腐食性のない流体のライン向け。
 亜鉛めっき処理ありの鋼管は「SGP(白)」「SGP(Zn)」「白ガス管」などと称される。

・SGPW:水道用亜鉛めっき鋼管 Steel Gas Pipe Water
 規定(JIS G 3442 SGPW)により、亜鉛メッキ付着量が平均値が600g/m2以上、
 最小値が550g/m2以上と定められており、SGP(白)よりもメッキ付着量が多い
 SGP(白)との区別で、「ダブダブ(ダブルメッキ)管」と呼称されたりもする。
 「水道用」とされていますが、’97年のJIS改正で上水道には使用できなくなっています。
 紛らわしい・・・(~_~;)

・SGP-VA、VB、VD
 :水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管  「polyVinyl」 の V+被覆範囲別記号
 SGP管に塩ビを被覆することで耐食性を持たせたもの。被覆範囲は、それぞれ*6
  VA:SGP(黒)を素管とした内面のみ
  VB:SGPWを素管とした内面のみ
  VD:SGP(黒)を素管とした内外面

・SGP-PA、PB、PD
 :水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管 「Polyethylene」の P+被覆範囲別記号
 SGP管にポリエチレン粉体を被覆することで耐食性を持たせたもの
 ビニルライニングよりも耐熱性に優れる。被覆範囲は、SGP-VA~VDと同じ表記。

(参考*6:JFEスチール株式会社 水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管/JLP


・STPG:圧力配管用炭素鋼鋼管 Steel Tube Pipe General
 SGPよりも高温・高圧な流体のライン向け。

・STPT:高温配管用炭素鋼鋼管 Steel Tube Pipe Temperature
 STPGよりも更に高温・高圧な流体のライン向け。

・SUS-TP-S,A:配管用ステンレス鋼管 Steek Use Stainless Tube Pipe
 耐食性、耐熱性に優れる。
 TP-Sはシームレス(Seamless/継ぎ目なし)管、TP-Aは電縫管(Arc welding)で*8
 前者の方が溶接線が無いためより高品質(剛性や寸法精度)だが高価。
 (参考*8:日鉄ステンレス鋼管株式会社 製品情報

個人的に真っ先に調べに行くメーカリンク先まとめ

*以下順不同です。

 樹脂製配管
  旭有機材株式会社 製品カタログ(管材システム事業)
  積水化学工業株式会社 エスロンタイムズ 製品紹介 工場配管

 鋼製配管
  JFEスチール株式会社 製品情報 鋼管・配管用  
  日本製鉄株式会社 配管用鋼管 製品情報

 今回は、樹脂配管と鋼製配管の、代表的な材種と特徴についてまとめました。
 最後のメーカリンク先、私は過去何百回アクセスしてお世話になったものか、という頻度で閲覧しています。
 最初のとっかかりや、全体像の理解のお役に立てればと思います。

 製造方法等による特徴・細かい使い分けなどの個別の深堀りは、

今後別の機会で説明できればと思います。
 それではまた次回!⛑ご安全に!⛑

 

マコト

産業系(食品加工/製鉄/特殊金属加工/電子部品/半導体)、化学系(化学製品/火力発電/バイオマス発電)、環境系(産廃処理/下水処理)など、多岐に渡る業界のプラントで、設計・施工管理・試運転・保守管理の業務全般を経験したプラントエンジニア。
様々な視点から、プラントエンジニアやプラント業界に関わる方にプラスとなる情報を発信したいと思います。

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