まずはここから!ヒーター材の種類と特徴

プラント設計情報

配管の加温は、プロセスの安定性や製品品質に大きく関わる重要な要素です。
特に寒冷地や低温環境での配管保護には、加温ヒーターの設置が欠かせません。
本記事では、配管加温ヒーターの種類とそれぞれの特徴について、初心者の方にも分かりやすく解説します。

電気加温(ヒータートレース)の種類と特徴

配管用のヒータートレースにはさまざまな種類がありますが、
ここでは電気加温ヒーターの代表的な3種類について解説します。
それぞれの特徴を把握することで、用途に応じた適切な選択が可能になります。

直列型ヒーター

直列型ヒーターは、内部に抵抗体が組み込まれた電線を配管に沿って取り付けるタイプです。
この電線に電流を流すことで熱を発生させます。

特徴・メリット
長距離対応が可能:1本のケーブルで長い配管を加熱でき、広い範囲を効率的にカバーします。
均一な発熱:抵抗値が一定のため、全長で均一な熱を供給します。
コストパフォーマンスが高い:構造がシンプルで導入コストが比較的低い。

デメリット
固定長が必要:ケーブルを所定の長さにカットすると機能しなくなるため、

      設計段階で正確な長さを計算する必要があります。
断線時のリスク:どこかが断線すると全体が機能しなくなるため、保守点検が重要。

並列型ヒーター

並列型ヒーターは、複数の抵抗体が並列接続されており、ケーブルの任意のポイントから発熱できます。

特徴・メリット
柔軟な長さ調整:必要な長さに切断して使用できるため、配管の長さが異なる場合でも対応可能。

断線への強さ:1箇所が断線しても他の部分は機能するため、信頼性が高い。
設置が簡単:長さ調整が可能なため、複雑な配管レイアウトにも適応しやすい。

デメリット
エネルギー効率が低い場合がある:使用しない部分の発熱が発生する場合があり、熱ロスにつながる可能性。

コストが高い:直列型に比べて製品自体の価格が高め。

(参考 : 株式会社ヤガミ 工業用電気ヒーター総合カタログ

自己制御型ヒーター

自己制御型ヒーターは、特殊なポリマーコアを持ち、温度が上がると抵抗値が上昇して発熱量を抑える仕組みです。
これにより、ケーブル全体で適切な温度が自動的に維持されます。

特徴・メリット
温度調整が不要:外部の温度制御機器がなくても、周囲温度や配管温度に応じて発熱量を自動で調整します。
省エネルギー:必要な箇所だけが効率的に発熱するため、エネルギーの無駄が少ない。
安全性が高い:過熱や火災のリスクが低く、メンテナンスが容易。

デメリット
短距離向け:長距離の配管には不向きで、設置距離に制限がある。
コストが高い:製品自体の価格が高く、初期投資が大きくなる。


(参考 : 株式会社ヤガミ 工業用電気ヒーター総合カタログ

スチームトレーシング、スチームジャケット

配管用のスチームトレースにはの代表的な2種類について解説します。
それぞれの特徴を把握することで、用途に応じた適切な選択が可能になります。

スチームトレーシング

スチームトレーシングは、蒸気を流す小径の配管(スチームチューブ)をプロセス配管に沿わせ、
蒸気の熱で配管を加温する方法です。

特徴・メリット
高温対応:蒸気の温度は広範囲に調整可能で、高温を必要とするプロセスに適しています。

シンプルな構造:比較的シンプルな構成で、設置と運用が容易。
既存の蒸気ラインを活用可能:プラントに蒸気供給システムがあれば、追加コストが抑えられます。

デメリット
熱ロスが発生しやすい:蒸気ラインが長くなると熱ロスが増加し、効率が下がります。

結露による問題:蒸気が凝縮すると、水分が配管内に溜まり、放置すると性能低下や腐食を招く場合があります。
定期メンテナンスが必要:凝縮水を排出するためのトラップの点検や清掃が不可欠。

スチームジャケット

スチームジャケットは、プロセス配管の外側を覆う二重構造(ジャケット)を設け、
その間に蒸気を流して配管全体を均一に加温する方法です。

特徴・メリット
均一な加熱:配管全体を包み込むように加熱するため、温度ムラが少なく、精密な温度管理が可能です。

結露リスクの低減:蒸気トラップを適切に配置することで、凝縮水の影響を最小限に抑えられます。
防寒・保護機能を兼ねる:ジャケットが外部環境からの影響を遮断し、耐候性を向上させます。

デメリット
高コスト:二重構造の設置が必要なため、初期費用が高くなる傾向があります。

設計の複雑さ:配管とジャケットのサイズや形状の整合性を取る設計が必要で、柔軟性に欠けることがあります。
メンテナンスが難しい:内部の蒸気ラインに問題が生じた場合、修理が手間になる場合があります。

スチーム加温は、蒸気供給設備が整っているプラントで特に有効ですが、
電気ヒータートレースと比べて初期投資や設置の複雑さが異なります。
また、万が一中長期的に蒸気供給が途絶えて加温能力が失われた場合を想定する必要もあります。
一方で、電気ヒータートレースはメンテナンスが容易で、エネルギー効率を重視する場面で有利です。

加温システムの制御方法

加温システムを効率的に運用するためには、制御技術の選定も重要です。以下のような制御方法が一般的です。

温度制御システム

PID制御(比例-積分-微分制御)
温度の過度な変動を抑え、安定した温度維持を行います。
電気式加温ヒーターやヒートトレースでよく用いられます。

オン/オフ制御
単純な温度制御で、加温ヒーターをオン・オフする方式。
初期投資が安く済みますが、精度が劣る場合があります。

多段階制御
高温帯と低温帯で別々の加熱方式を使い分けることで、効率的な加温を行います。
スチームヒーターや大型設備で見られます。

まとめ

配管加温には、電気ヒータートレースやスチームトレーシング、スチームジャケットなどさまざまな方法があります。
それぞれの方法には独自の特徴があり、用途や条件に応じて適切に選択することが重要です。

電気ヒータートレース
 直列型並列型自己制御型などの種類があり、設計の柔軟性とメンテナンス性が高いのが特長です。

 特にエネルギー効率を重視する場面や、蒸気供給システムがない施設では有力な選択肢となります。

▼スチーム加温
 スチームトレーシングはシンプルで高温対応が可能ですが、凝縮水の管理が課題です。

 スチームジャケットは均一な温度管理が可能で、外部環境の影響を受けにくい一方、初期コストが高く設計が複雑です。
 蒸気供給設備が整ったプラントでは高温プロセスに特に適しています。

▼選定のポイント
 配管の用途とプロセス温度
  加温が必要な温度範囲や精度に応じて適切な方法を選択することが重要です。
 設備状況
  プラントの既存設備(例: 蒸気供給ラインの有無)やエネルギーコストを考慮します。
 メンテナンス性
  継続的な保守作業の負担や、トラブル時の対応を見越した選択を心がけるべきです。

電気ヒータートレースは、設置の柔軟性やエネルギー効率の面で非常に優れており、

特に中小規模のプラントや複雑な配管レイアウトに最適です。
一方、スチームトレーシングやスチームジャケットは、高温プロセスや大規模プラントでの利用に適しており、
蒸気供給設備を活用できる場合に非常に効果的です。

適切な配管加温方法を選定することで、プロセス効率の向上やエネルギーコストの削減が実現できます。
ぜひ、この記事を参考に、プラントの条件に合った最適な選択をしていただければ幸いです。


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マコト

産業系(食品加工/製鉄/特殊金属加工/電子部品/半導体)、化学系(化学製品/火力発電/バイオマス発電)、環境系(産廃処理/下水処理)など、多岐に渡る業界のプラントで、設計・施工管理・試運転・保守管理の業務全般を経験したプラントエンジニア。
様々な視点から、プラントエンジニアやプラント業界に関わる方にプラスとなる情報を発信したいと思います。

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