金属部材は、プラント設備のあらゆる場所で使用されますが
そのままでは摩耗・腐食・疲労などのダメージを受けやすいものです。
そこで重要になるのが「金属表面処理」。表面の硬さを高めたり
耐摩耗性・耐食性を向上させることで、設備の寿命を大きく伸ばすことができます。
この記事では、代表的な表面処理を4つのカテゴリに分けて
初心者の方でも理解しやすいように用途・特徴とともに解説します。
まずは表面処理の全体像をつかむ入門として活用してください。
字面だけでは分かりにくいので、ビジュアルで理解がしやすいように
各処理ごとに様々なメーカーのYouTube動画もリンクを張らせていただき、ご紹介していきます。
拡散浸透処理
金属表面へ炭素や窒素を浸透させ、母材と一体化した硬化層を作る方法。
剥離しにくく、耐摩耗性や疲労強度が大きく向上します。
浸炭
概要:鋼材表面に炭素を浸透させた後、焼き入れすることで表面を硬化させる処理。
メリット:高い耐摩耗性を得られつつ、内部は粘りを保てるため折損しにくい。
用途:歯車・軸・ピン類など、摩耗が多いが折れにくさも必要な回転部品。
参考:IWATA BOLT 浸炭熱処理とは?(ねじやボルトの熱処理工程について)
窒化
概要:窒素を金属表面に浸透させて硬化させる処理。比較的低温で行うため変形が少ない。
メリット:耐摩耗性・耐疲労性・耐食性が同時に向上し、寸法変化が抑えられる。
用途:金型・シャフト・バルブ部品など、高精度が必要で変形が許されない部品。
参考:株式会社オージック 【第9回目 歯車の熱処理-窒化処理】
表面焼き入れ
表面のみを急速加熱し、急冷して硬化させる方法。
内部の粘りは保ちつつ、必要な部分だけを硬化できるのが特徴です。
火炎焼き入れ
概要:ガス炎で表面を加熱し、その後急冷することで表面だけ硬化させる処理。
メリット:設備が比較的簡単で、大型部材にも適用しやすい。
用途:軸・レール・大型ギアなど、広い面積を硬化させたい大型部品。
参考:EMIDAS MOVIE_焼き入れ(昭和電機鋳鋼株式会社)
高周波焼き入れ
概要:コイルの高周波電流で表面を誘導加熱し、急冷で表面層を硬化させる処理。
メリット:硬化深さを精密に制御でき、量産性が高い。
用途:シャフト・ピニオンギア・ロールなど、一定深さの硬化層が求められる量産部品。
被覆処理
金属表面に別材料(硬質金属・セラミックなど)をコーティングし
摩耗・腐食・熱に対する性能を向上させる方法。
硬質クロムメッキ
概要:クロム皮膜を金属表面に電着させて被覆する処理。
メリット:耐摩耗性・耐食性が高く、寸法精度を維持しやすい。
用途:ロール・ピストンロッド・油圧機器など、
摩耗と錆の両方に強く、寸法精度が求められる部品。
参考:株式会社三和鍍金 【めっきを学ぶ#13】硬質クロムメッキ
溶射
概要:金属粉末やセラミックを溶融させ、表面に吹き付けて皮膜を形成する処理。
メリット:耐熱・耐食・耐摩耗など、目的に応じた多様な皮膜を選べる。
用途:バーナーノズル・ロール・耐熱部品など、
特定環境(高温・腐食・摩耗)に合わせて性能を最適化する必要がある部品。
参考:大阪ウェルディング工業株式会社 HVOFプロセス(高速溶射)
放電硬化(Electrical Discharge Coating)
概要:電気的放電エネルギーにより、表面に硬化層を形成する局所硬化プロセス。
メリット:必要な部分だけを硬化でき、熱影響が少ない。
用途:金型・刃物・局所的に摩耗が起きる部品など、
限られた部位のみを強化したい用途。
参考:三菱電機株式会社 三菱形彫放電加工機/EDCoating

加工硬化処理
物理的な力を加えて金属表層を変形させ
残留応力や組織変化によって強度を高める方法。
ショットピーニング
概要:金属球を高速で衝突させ、表面に残留圧縮応力を与える処理。
メリット:疲労強度が大幅に向上し、クラックの発生を抑制できる。
用途:バネ・タービン翼・回転軸など、
繰り返し荷重で疲労が起きやすい部品。
参考:カトウ光研株式会社 【PIV】1秒50,000枚撮影で捉えたショットピーニング投射材!ハイスピードカメラ&PIV計測!
表面圧延
概要:硬いローラーで表面を押し付け、塑性変形させて平滑化しつつ強度を高める処理。
メリット:表面粗さ改善、疲労強度向上、耐摩耗性の向上が同時に得られる。
用途:シャフト・レースウェイ・ロールなど、
表面仕上げと強度向上を同時に実現したい部品。
まとめ
金属表面処理は、
- 元素を浸透させる(拡散処理)
- 表面だけ焼き入れる(表面焼き入れ)
- 別材料で覆う(被覆処理)
- 物理的に叩いたり押したりする(加工硬化)
といった複数のアプローチがあり、目的に応じて選択されます。
プラント設備では摩耗・腐食・疲労などの課題が多いため、処理と用途の対応を把握することで
より適切な材料選定・保全判断ができるようになります😄
これらの知識は、保全技能士試験だけでなく、
施工管理技士や実際の設計業務でも活用できる重要なポイントです。
基本的な考え方を身につけて、試験では確実に得点しましょう!
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