まずはここから!ダイヤフラムポンプの必須知識

プラント設計情報

前回まで解説した渦巻ポンプなどの非容積式ポンプに引き続き、
今回は容積式ポンプの中から、ダイヤフラムポンプについてまとめます。

ダイヤフラムポンプはその名の通りダイヤフラム(隔膜)が組み込まれており、
隔膜を動かすことで液を移送するポンプです。
その構造と特徴について、それぞれの特徴を説明します。

詳細は後述の通りですが、少量の流体を安定して移送できて、隔膜材質で耐食性を担保できるため
プラントにおいては薬品などの腐食性の高い液体の注入に適用されますケースが多いです。

関連する主要メーカのお役立ちサイト情報や、初心者向けの書籍についてまとめました。

ダイヤフラムポンプの送液原理と構造

ダイヤフラムポンプは、注射器と同じような原理です。
ポンプ室(ポンプヘッド)に対して、ポンプシャフトを往復運動させることで液体を押出します。

注射器は吸い口と吐き出し口が同じですが、ダイヤフラムポンプは入口と出口が別に設けられており、
それぞれにチャッキ弁(ボールチャッキであることが多い)があるため、
ダイヤフラムの収縮に合わせて「ポンプ室内から液の吐出す&新たに液を吸込む」という動作を繰り返します。

下記のイワキの公式YouTube動画が、メンテナンス方法(内部構造が分かる)等を含めて
様々なシリーズ動画で解説されており、構造や原理が理解し易いです。

(参考 : 株式会社イワキ イワキ 定量ポンプ LK 取扱説明書


(参考:株式会社イワキ イワキ 定量ポンプ LK)


(参考:株式会社イワキ イワキ 定量ポンプ LK メンテナンス(ダイヤフラムの交換))

ダイヤフラムポンプのメリットとデメリット

接液部がダイヤフラム室のみで、軸封部が無いため腐食性の高い薬品等にも対応可能です。
ポンプ室の容積分を常に一定間隔で送り出すため、送液の定量性が担保できる他、
ポンプシャフトの往復距離または速度を調整することで送液量の微調整もできます。
また、動力にエアーを使うタイプはシャフトに摺動部が無いため発熱せず防爆対応となるメリットもあります。

(参考 : 株式会社ヤマダコーポレーション ダイヤフラムポンプの特徴)


これと言ったデメリットはありませんが、強いて言えば大容量の移送に向かないことと、
基本的にポンプ1台に対して、注入点も1箇所となるため、
移送先・注入点が複数個所あるとその分ポンプ台数も増やす必要がある点です。

特性上、用途・メリット/デメリットがはっきりしているため、
必要箇所でピンポイントに採用するポンプと言えます。

ダイヤフラムポンプの付属品

ダイヤフラムポンプはその特性上、以下の付属品を具備することが推奨されています。
それぞれの設置場所および設置目的についてまとめました。

(参考 : 株式会社イワキ イワキ 定量ポンプ LK 取扱説明書

ストレーナー

異物が混入すると、ポンプヘッド前後のボールチャッキ部の閉塞や
ダイヤフラム部での噛み込みなどでポンプヘッド内に異常をきたすため
異物混入防止用にストレーナーを設ける必要があります。

エアチャンバー

ピストンの往復動により、ダイヤフラムポンプの吐出ラインは脈動流となるため、
エアチャンバーを設け、内部に溜めた空気(エアクッション)で脈動を軽減します。
エアチャンバーは、ダイヤフラムポンプの直上に取り付けると効果的です。

脈動による振動はポンプ本体や配管の破損に繋がるため、その軽減は装置の長寿命化に寄与します。
また、背圧弁の説明で後述するオーバーフィードの予防にもなります。

フローチェッカー

吐出量を絞った場合、液が移送されているのかを目視で確認しにくくなります。
そのため、透明管に浮き子の入ったフローチェッカーで小流量クラスの吐出状況を目視できるようにします。

(参考 : 株式会社イワキ モータ駆動定量ポンプ用アクセサリー

安全弁

ダイヤフラムポンプはその原理上、自身が破損するまで吐出圧を上げることが出来てしまうため、安全弁の設置は必須です。
吐出ラインの異物による閉塞や、バルブ締切りなどによって配管内の圧力が異常に高くなった場合、
ポンプ・配管の破損を回避するため安全弁で過剰圧を開放します。

背圧弁

吐出配管上の注入点付近に設置し、オーバーフィード現象やサイホン現象を防止する圧力調整弁です。
吐出配管ラインに常に一定の圧力(背圧)をかけることで、末端での注入量を定常流のように安定させるとともに、
規定量より過大に吐出されること(オーバーフィード)を防ぎます。
(参考 : 株式会社イワキ ポンプの基礎 用語編【オーバーフィーディング】

まとめ

ダイヤフラムポンプの構造と特徴についてまとめました。
ダイヤフラムポンプは容積式ポンプの中でも、防爆性や耐食性に
特徴があるポンプで
プラントにおいては明確な役割をもって採用されるケースが多いです。

今回紹介した、イワキの公式ブログタクミナの基礎講座ページなど、
各メーカごとに基礎知識~メーカごとの主力製品・技術がまとめられています。
初心者~若手プラントエンジニア向けな内容となっているので、ご一読されることをお勧めします。

また、ダイヤフラムポンプ以外のポンプ全般の「やってはいけないこと」
分かりやすい図解とともに説明している、初心者必読の書籍についてもご紹介します。
👇👇👇

ポンプ以外の「べからず集」については、過去の投稿でまとめていますので是非ご一読ください!
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次回も引き続き、ポンプ形式に応じた原理原則や、
関連するメーカの特徴と、勉強するのにおすすめなサイトなどを
ご紹介できればと思います。

それではまた次回、⛑ご安全に!⛑

マコト

産業系(食品加工/製鉄/特殊金属加工/電子部品/半導体)、化学系(化学製品/火力発電/バイオマス発電)、環境系(産廃処理/下水処理)など、多岐に渡る業界のプラントで、設計・施工管理・試運転・保守管理の業務全般を経験したプラントエンジニア。
様々な視点から、プラントエンジニアやプラント業界に関わる方にプラスとなる情報を発信したいと思います。

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