まずはここから!化学洗浄で用いる薬品の種類と特徴

プラント設計情報

熱交換器、ボイラー、配管、タンク——
プラント機器の性能を維持するうえで「化学洗浄」は欠かせないメンテナンス手法です。

しかし、使用する薬品は強酸・強アルカリ・毒劇物など危険なものも多く、
「なんとなく先輩のやり方を真似る」では非常に危険な作業でもあります。

この記事では、初心者プラントエンジニア向けに、

  • どんな種類の薬品があるのか
  • それぞれ何が得意なのか
  • どんな危険や注意点があるのか

を体系的に整理しました。化学洗浄に使用される薬品は、大きく

  • 酸性薬品:スケール(無機物)を溶かす
  • アルカリ性薬品:中和・脱脂・防錆・排水処理

という役割分担があります。
それぞれ代表的な薬品と「使いどころ」「注意点」を見ていきます。

👇ボイラーの化学洗浄についてまとめた過去記事はコチラ!

酸性薬品(主にスケール溶解)

塩酸(HCl)

もっともポピュラーな洗浄酸。いわば 化学洗浄の主力選手

特徴

  • 安価で入手性が良い
  • 炭酸カルシウム、鉄錆など幅広いスケールに有効
  • シリカ系スケールには不向き

注意点

  • 塩化水素ガスが発生(強烈な腐食+刺激臭)
  • 周辺設備・電気計装の腐食トラブルリスク
  • 換気・養生は必須

👉「とりあえず塩酸」は便利だけど、設備ダメージのリスクも大きいため要注意です

硫酸(H₂SO₄)

特徴

  • 腐食性ガスが発生しない
  • 濃度によっては取り扱いが比較的安定
  • カルシウムスケール洗浄には不向き

注意点

  • 希釈時に猛烈な発熱(必ず「酸を水へ」)
  • 濃硫酸と希硫酸で腐食性が異なるため、接液材質と濃度に注意が必要

👉 濃度管理と使用範囲を明確にして使用するのが肝要です。

スルファミン酸

特徴

  • カルシウム塩の溶解度が高い
  • 粉体で扱いやすく、保管・輸送がラク

👉 カルシウム系スケールなら硫酸よりこちらが定番

現場では「とりあえずスルファミン」になることも多いです。

ギ酸

特徴

  • 有機酸としては酸性が強い
  • 還元作用あり(酸化鉄除去に有効)

注意点

  • 洗浄廃液のCODが高くなるため、排水処理負荷が増大する

👉 洗浄廃液に対する排水設備のCOD処理能力、放流基準値の確認が必要です。

クエン酸

特徴

  • 腐食性が非常に低い(安全性◎)
  • ステンレス設備にも安心

弱点

  • 溶解力が弱いため高温(80~100℃)が必要

👉 「安全第一」「閉鎖設備洗浄」で活躍します。
  水洗で押し流しきれない系統の洗浄に向いています。

アルカリ性薬品(中和・脱脂・防錆)

水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)

最も一般的な中和剤です

特徴

  • 強アルカリで反応性高い
  • 脱脂力も強い

注意点

  • 薬傷リスク大(皮膚がヌルっと溶けます…)
  • 希釈熱・凍結に注意

👉 PPE必須。ゴーグル+フェイスシールドなどの保護具は必須

炭酸ナトリウム(ソーダ灰)

特徴

  • 穏やかな中和剤
  • 取り扱いが比較的安全

注意点

  • 吸水性が高くゲル状なりやすいため湿気に注意

👉 保管管理は乾燥した場所で、湿気はNG

酸化カルシウム(生石灰)

特徴

  • 非常に吸湿性が高く、水と反応すると強力な熱を発生させながら「水酸化カルシウム」へと変化する
  • 湿気取りとして、押し入れの衣類や食品の乾燥剤などにも使われる

注意点

  • 水へ投入する時は激しく発熱するため、一気に多量投入すると危険

👉 少量ずつ慎重に、ゆっくりと水に溶解させていく

水酸化カルシウム(消石灰)

特徴

  • 生石灰(酸化カルシウム)に水を加えて生成される
  • 運動場のライン引き、壁材(漆喰)、土壌改良、消毒剤として利用される
  • 中和剤として使用した場合、カルシウムが残るためスケーリングに注意

👉中和剤「困ったら消石灰」は現場あるある。

石灰に関しては、でんじろう先生の実験動画が分かり易いです。

(参考:でんじろう先生のはぴエネ!【公式】Mr. Denjiro’s Happy Energy!

アンモニア

特徴

  • 銅系スケールの溶解に有効

注意点

  • 強烈な刺激臭
  • 洗浄廃液のT-N(全窒素)が高くなるため、排水処理負荷が増大する

👉 洗浄廃液に対する排水設備の窒素処理能力、放流基準値の確認が必要です。

リン酸ナトリウム

特徴

  • 防錆+中和の両立ができる
  • ボイラー分野化学洗浄多用される

注意点

  • 洗浄廃液のT-P(全リン)が高くなるため、排水処理負荷が増大する

👉 洗浄廃液に対する排水設備のリン処理能力、放流基準値の確認が必要です。

ヒドラジン

特徴

  • 強力な脱酸素剤・還元剤
  • ボイラー水処理の歴史的主役

注意点

  • 発がん性があるため近年は代替薬品へ置き換えが進行中。

まとめ

文章だけでは覚えにくいので、最後に用途別で整理した早見表を用意しました。
現場で薬品選定する際のリファレンスとして活用してください。

区分薬品名主な用途
得意分野
メリット注意点・リスク
塩酸一般スケール・鉄錆安価・高溶解力・万能型腐食性ガス発生
硫酸一般スケールガス発生なしCaスケール不向き
希釈時の激発熱
スルファミン酸カルシウムスケール粉体で扱いやすい、安全性高め
ギ酸鉄錆・酸化物除去還元作用あり排水COD負荷
クエン酸軽度スケール・安全洗浄腐食リスク低、安全性◎高温必要
溶解力弱い
アルカリ苛性ソーダ中和・脱脂反応性高い、万能中和剤強薬傷
希釈熱、凍結
アルカリ炭酸ソーダ中和取り扱い容易吸湿固化
アルカリ生石灰pH調整・排水処理安価・強アルカリ水と激発熱
アルカリ消石灰排水中和安全性高・安価スラリー管理必要
アルカリアンモニア銅系スケール銅溶解性高い強臭気
排水窒素負荷
アルカリリン酸ナトリウム防錆+中和ボイラー水処理定番排水リン
特殊ヒドラジン脱酸素・防錆強力な還元剤発がん性
毒劇物

化学洗浄薬品は、

  • 酸 → スケールを溶かす
  • アルカリ → 中和・防錆・排水処理

という役割で使い分けます。

しかし同時に、

  • 腐食
  • 薬傷
  • 有毒ガス
  • 排水規制

といったリスクも常に隣り合わせです。

「洗浄できればOK」ではなく、
安全・設備保護・環境負荷まで含めて設計するのがプラントエンジニアの腕の見せ所

ぜひ、薬品の特徴を理解したうえで適切に選定していきましょう。



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マコト

産業系(食品加工/製鉄/特殊金属加工/電子部品/半導体)、化学系(化学製品/火力発電/バイオマス発電)、環境系(産廃処理/下水処理)など、多岐に渡る業界のプラントで、設計・施工管理・試運転・保守管理の業務全般を経験したプラントエンジニア。
様々な視点から、プラントエンジニアやプラント業界に関わる方にプラスとなる情報を発信したいと思います。

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