ボイラーのトラブルの多くは、実は「汚れ」から始まります。
伝熱不良、効率低下、チューブ焼損、最悪の場合は破損事故。
その原因をたどると、灰・すす・スケールといった“付着物”に行き着くことがほとんどです。
それらをリセットするために行うのが 化学的清浄(化学洗浄) です。
ただしこの作業、「薬品を入れて洗うだけ」
…に見えて、実は 危険物だらけの高難度メンテナンス作業 でもあります。
この記事では、初心者プラントエンジニア向けに、
・化学洗浄の全体の流れ
・使用する薬品の種類
・現場で本当に重要な注意点(安全面も含む)
をやさしく解説していきます。
まずはしっかり全体像をつかみましょう ✅
化学洗浄の工程
化学洗浄は一般的に次の流れで進みます。
予熱 → 潤化学処理 → 薬品洗浄 → 中和・防錆処理
それぞれの役割を見ていきます。
予熱
温水でボイラー内部を加温します。
目的は、
・機器温度の均一化
・薬品反応の促進
・油分や軽い汚れの除去
いわば「洗浄前の準備運動」です。
温度が低いと反応が進まず、洗浄効果が大きく落ちるため、地味ですが重要な工程です。
潤化学処理(プレ洗浄)
軽いアルカリ洗浄で油分や有機物を除去します。
油が残ると酸が金属表面に届かず、洗浄ムラの原因になります。
家庭でいう「本洗い前の脱脂」と同じイメージですね。
薬品洗浄(酸洗浄)
ここがメイン工程です。酸を用いて、
・スケール
・酸化鉄(さび)
・付着物
を溶解除去し、伝熱面を回復させます。
洗浄後はボイラー効率が明らかに改善するため、効果を最も実感できる工程です。
中和・防錆処理
酸洗浄後の金属表面は非常に活性状態です。そのままだと一気に錆びます。
そこで、
・残留酸の中和
・防錆皮膜の形成
を行い、再腐食を防止します。ここまで実施して初めて「洗浄完了」です。
洗浄用の仮設設備
これらの化学洗浄を行うための仮設設備スペースも必要です。
薬品の取り扱いもあるため、一時的な防液堤代わりのシート養生区画や
中和後の洗浄廃液は固液分離して、上澄水とスラリーをそれぞれ処理する必要があります。
産廃処理してしまうか、プラント内の排水処理設備などで受け入れ処理が可能かを
事前に調査・調整しておくことも重要です。

(参考:関電プラント株式会社 ボイラ化学洗浄)
薬品洗浄の種類と用途
酸洗浄で使用する薬品は大きく 無機酸系と有機酸系 に分かれます。
無機酸(塩酸・硫酸など)
強力な溶解力があり、短時間でスケールを除去できます。
一方で 腐食性・危険性が非常に高い薬品 でもあります。
特徴
・洗浄力が強い
・反応が速い
・比較的低コスト
取扱い注意(超重要⚠️)と現場ポイント
・強腐食性(皮膚・眼に重篤な薬傷)
✅ 耐酸手袋・フェイスシールド・ゴーグル必須
✅必ず「酸を水に入れて希釈」(逆は危険)
・酸ミスト吸入リスク
・金属と反応して水素ガス発生(滞留すると爆発のリスク)
✅ 換気徹底、防毒マスクの着用
・塩酸はステンレスの応力腐食割れの原因
✅事前の材質確認を忘れない
「ちょっと触れただけ」で普通にケガします。
取り扱いは最大級の注意を。
有機酸(クエン酸・ギ酸など)
無機酸より穏やかで、腐食リスクが低く扱いやすいのが特徴です。
特徴
・腐食性が比較的低い
・ステンレスにも適用しやすい
・塩酸、硫酸に比べて安全
事前のスケール調査で、有機酸でも無機酸でも効果がある場合は
まずこちらが選ばれるケースが多いです。
酸洗浄中の共通注意点
以下のポイントは、ボイラー技士・ボイラー整備士試験でも頻出するポイントです。📝
・流速は3m/s以下(エロージョン防止)
・酸濃度と溶出鉄イオン濃度を監視(Fe3+ + 2Cu2+ < 1,000mg/Lを保持)
・洗浄後は60℃以上の温水でpH5以上まで水洗
・パッキン内部の酸残り防止のためグランドを緩める
・必要に応じて窒素置換で発錆防止する。
中和防錆剤の種類と用途
中和剤(炭酸ナトリウム・水酸化ナトリウム・アンモニア)
残留酸を中和します。「中和=安全」ではなく、強アルカリも十分危険物 です。
取扱い注意(超重要⚠️)と現場ポイント
・化学火傷リスク
✅ 耐酸手袋・フェイスシールド・ゴーグル必須
・苛性ソーダ溶解時の発熱・飛散
✅ 固形薬品はゆっくり投入
✅急激な中和反応を避ける
・アンモニア蒸気による刺激臭・中毒
✅ 換気徹底、防毒マスクの着用
アルカリは痛みを感じにくいので、気づいたら重症化しがち。
「ヌルっとしたら即洗浄」です。
防錆剤(リン酸ナトリウム・ヒドラジン)
金属表面に保護皮膜を形成し、腐食を抑制します。
リン酸ナトリウム
比較的安全ですが、粉体から溶解して循環液を準備する場合は、粉じん吸入と排水規制に注意。
✅防じんマスク着用
✅排水処理設備への影響確認(リンの放流規制値を超過しないこと)
ヒドラジン(特に注意⚠)
毒性が高く、劇物・発がん性リスクあり。
注意点
・吸入・皮膚吸収による健康被害
・環境規制が厳しい
✅密閉系で取り扱う
✅防毒マスク・耐薬品手袋
✅こぼしたら即回収
近年では、ヒドラジンは使用を避けるケースが増えてきています。
中和防錆処理の運転条件
以下のポイントは、ボイラー技士・ボイラー整備士試験でも頻出するポイントです。📝
・循環液温:80~100℃、pH:9~10 を 約2時間保持する
・または低燃焼で、圧力0.3~0.5MPaを保持する
防錆皮膜を残すため、最終水洗は省略するケースも多いです。
まとめ
ボイラーの化学洗浄は、
✅ 汚れを落とす「酸洗浄」
✅ 腐食を防ぐ「中和防錆」
をセットで行う作業です。そして同時に、「危険物取扱い作業」でもある
という点を忘れてはいけません。
・温度
・濃度
・流速
・pH
・安全管理
これらをきちんとコントロールしてこそ、プロのエンジニアです。
薬品は便利ですが、油断すると牙をむきます。
「薬品=凶器」くらいの慎重さでちょうどいい世界。
安全第一で、確実な洗浄を心がけましょう 👍
プラントの各設備では摩耗・腐食・疲労などの課題が多いため、
処理と用途の対応を把握することでより適切な材料選定・保全判断ができるようになります😄
これらの知識は、ボイラー技士やボイラー整備士試験対策だけでなく
実際の保全業務でも活用できる重要なポイントです。
基本的な考え方を身につけて、試験では確実に得点しましょう!
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