プラントの運用やメンテナンスにおいて、バルブの操作は日常的な作業です。
バルブの種類や設置場所に応じて適切なハンドルを選定することは、安全かつ効率的な運用において重要な要素です。
本記事では、手動バルブのハンドル種類に焦点を当て、操作性、安全性、
そして配管設計上の制約を考慮したハンドル選定のポイントを解説します。
運用面での操作性
手動バルブの操作性は、口径や用途に応じたハンドルの選定が鍵となります。
- バルブ開閉トルクを考慮したハンドル選定
大口径のバルブでは、弁体にかかる圧力が高くなり、操作時に高トルクが必要となることがあります。
この場合、ウォームギア式ハンドルは高トルク下でも操作性に優れています。 - 開閉操作時間を考慮したハンドル選定
丸形ハンドルは見た目の通り、丸いハンドルで「ハンドル」と聞いて世間一般に思い浮かべる形状です。
株式会社キッツの丸形ハンドルは、握り易さを考慮した形状で「菊ハンドル」の商標を取得しています。
(参考:株式会社キッツ 青銅・黄銅バルブ)
大口径の丸形式ハンドルでは、全開・全閉の操作に時間がかかります。
急開・急閉が求められる場面では、レバー式やT字式ハンドルが迅速な操作を実現します。
小口径の場合は、ツマミのように動かせる蝶型式が多いです。
(参考:株式会社キッツ ボールバルブ) - 全開/全閉運用か、調整開運用か
GL弁のようなバルブでは丸形式ハンドルで調整開運用が可能ですが、
BF弁の場合、レバー式とギア式があり、ギア式の方が微調整に適しています。
(参考:巴工業株式会社 手動式アクチュエーター) - 操作位置に応じたオプション
バルブが高所や低所に設置される場合、アクセスが困難なことがあります。
このような場合には、ロングシャフトやロングステム、さらにはチェーンホイールハンドルなどが有効です。
ただし、これらの延長装置には、操作のための障害物がないことが前提となります。
(参考:巴工業株式会社 手動式アクチュエーター)
運用面での安全性
運用上の安全性を確保するためには、誤操作や予期せぬ動作を防ぐことが必要です。
- 高温プロセスや危険薬品の運用リスク
危険なプロセスでは、急開閉や体の接触による誤操作のリスクがあります。
実際に、転倒する / 作業服の袖や裾をひっかける / 安全帯のようなロープをひっかける
といった予期せぬ誤操作による事故は、各地の工場で昔から良く聞く話です。
急開閉がリスクに繋がるラインでは、容易に全閉/全開操作ができてしまう
レバー式、T字式、蝶式を避けるべきですが、やむを得ずそのようなハンドルを採用する場合は、
上記のようなリスクを考慮し、ハンドルロックやハンドルカバーの設置が求められます。
(参考:日本ブレイディ株式会社 バルブ用ロックアウト) - 振動によるハンドル位置の変化に対する考慮
配管や機器の振動で、ハンドルが自重により徐々に下がることがあります。
特にボイラの水位計元弁などでは、ハンドルの下がった状態が通常運用状態とされ、
誤操作を防止する運用も行われています。
(水位計の上下元弁は、ハンドルが下向きで開状態。最下部のドレン弁は、ハンドルが下向きで閉状態)
(参考:株式会社サワダ製作所 チューブラ式レベルゲージ) - ハンドル操作用治具
操作頻度が低く固着してしまっているハンドルや、ハンドル操作に高トルクが必要な場合は
ハンドル回し/ウィルキーという治具を用います。テコの原理で小さな力でもハンドルを回すことができます。
市販のものもありますが、丸鋼に歯を立てるようにボルトを2本を溶接して自作する場合もあります。
まれに、弁軸が錆びたり腐食している古いバルブを、力任せにウィルキーで回して
ハンドルごと弁軸が折れてしまう例を見かけるので、無理な扱い方はしないよう注意が必要です。
配管設計上の制約
設計段階での配管レイアウトやメンテナンス性を考慮したハンドル配置も重要です。
- 配管レイアウトと操作性
ハンドルの開閉軌跡が大きいレバー式ハンドルは、周辺配管の配置によっては避けられることがあります。
狭いスペースでは、軌跡が少ないハンドルを選定することが推奨されます。
バルブが直列・並列に並ぶ場合は、お互いのハンドルの開閉状態がどのような組み合わせでも
干渉が回避できるようなレイアウトが必要となります。 - メンテナンス性と視認性
メンテナンス時の操作性や視認性も重要です。
バルブや配管に正対した際に、操作しやすい位置(高さ・向き)にハンドルが配置される工場もあります
例えば、右利きの作業員が多いことを想定し、右側にハンドルを配置することをルール化している現場もあります。
また、前述のレバー式ハンドルなど開閉軌跡が大きいバルブは、周辺の計器の視認性や
他の機器のメンテナンス時に邪魔にならないハンドル軌跡であることも考慮が必要です。
まとめ
手動バルブのハンドル選定は、プラントの運用性、安全性、そして配管設計に深く関わっています。
バルブの種類や設置場所、操作環境に応じた適切なハンドルを選ぶことで、効率的かつ安全な運用が可能となります。
この記事を参考に、現場の要件に最適なハンドルを選定し、運用の最適化を目指しましょう。
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