2024年度が始まり、早1ヶ月が経過しました。
以前、新たにプラントエンジニア業界に入ってきた方向けに
まず始めに読むべき書籍として「べからず集」を紹介しました。
こちらは、プラントエンジニアの業務において多岐に渡って覚えなければならない
「やらなければならないこと」よりも、まず始めに「やってはいけないこと」を覚えることで
自らに加えて同じプラントで働く仲間を助ける、という考えからご紹介させていただきました。
今回は、「べからず集」から次のステップに進むにあたっての書籍紹介です。
プラントエンジニアの多岐に渡る「やらなければならいこと」を
身につけていくための第一歩として役立つ入門書をピックアップしました。
主に以下の3つのカテゴリに分けています。
1.関連する業界の仕組みを理解する
2.建設業関連の専門用語を覚える
3.専門分野を学ぶための分かり易い入り口になる
私自身も、新人~3年目くらいの間に読んだ書籍が多いですが、
未だにブログ記事をまとめるときに見返したり、
若手に勉強を勧めるときにもこれらの本をよく紹介します。
また、中堅の方でも自身の専門分野を軸に、
周辺分野への知見を広げていくための導入教本としても使えます。
改めて、学びなおしたい分野があれば手に取ってみてはいかがでしょうか。
*各書籍にはアフィリエイト広告のリンクを貼らせていただいております。
関連する業界の仕組みを理解する
プラントエンジニア自らの業界としては建設業や製造業が軸になりますが、
BtoBでビジネスを展開するため、顧客の業界は多種多様です。
プラントエンジニアリング会社の組織は、顧客業界別に部署を縦割りにしていることが多いです。
これは、同じプラントエンジニアリングでも業界が違うと設計や運転管理などの常識が大きく異なるためです。
例えば、市況や需給バランスにより大きく繁閑が動く半導体工場と、
人体・生命に関わる製品を扱う医薬品・医療器具メーカの工場では、
エンジニアリングにおけるプライオリティが何なのか? は、ガラりと変わります。
配属先の部署が相手にする顧客の業界構造や、ビジネスモデルを理解することは
業務を遂行するにあたり「顧客の業界における常識を理解する」ために重要な要素です。
「あ、この人は我々のビジネスを理解しているな」という安心感・信頼感を顧客に持っていただくことで
プロジェクト遂行における日々のやりとりがスムーズになります。これが実は非常に大切です。
この信頼を得られずプロジェクトが進むと、要所要所で余計なコミュニケーションコストが発生します。
『図解即戦力 建設業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』
プラントでは多くの設備設計・施工が入り乱れますが、それらが展開される土台となるのは土木建築物です。
建築分野は「シビル」とも呼ばれ、主に土木工事(工場内の道路/外構を含む)や建築物の設計施工がそれらにあたります。
プラント建設プロジェクトにおいて建築業界とプラント業界は切っても切れない関係があり、
大規模プラントの建設になると、複数のゼネコン会社でJVが組まれるケースもあります。
建築/シビル業界に関する理解を深めることで、プロジェクト進行を円滑に進める助けになります。
プラントを含めた建設業界について広くまとめられており、
自身の業界理解が足りないと感じている新人には初めに読んでもらいたい本です。
『図解即戦力 化学業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』
プラントエンジニアリング業界のBtoBビジネスパートナで、メインとなるのが化学業界です。
材料・素材系のメーカから、二次精製品のメーカなど、化学工場の裾野は広く
ピンポイントで担当案件の顧客・工場を理解する前に、業界全体像を理解するとその立ち位置が分かります。
『図解即戦力 医薬品業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』
医薬品関連のプラントは、先に少し触れた通り他業界とはかなり常識が異なります。
人体に直接導入される医薬品や医療器具を扱うため、何かしらのミスが人体・生命に与える影響に直結するため
品質管理面の厳格さや確認すべき事項に業界特有の考え方があります。
食品業界のプラントでも、異物混入のリスクに対する考え方が似通っています。
『図解即戦力 電力・ガス業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』
インフラ系のエネルギープラントは、他のプラントと異なり社会の生活基盤を支えています。
365日24時間、いかなる状況でも安定稼働することが最重要視されるため、
設備の寿命やメンテナンス、非定常時のセーフティに対する考え方などが他業界とは異なります。
また、原材料の精製や製品製造しているプラントではないため、利益構造についても他の産業とは考え方が違います。
『図解即戦力 半導体業界の製造工程とビジネスがこれ1 冊でしっかりわかる教科書』
日本においては、TSMCが熊本にやってきたことでメディアにも大きく取り上げられ、
テレビ、書籍、動画メディア、など様々な媒体で日々半導体業界の動向が語られています。
AIブームにより更に需要が増している半導体ですが、需給予測が難しいことや
扱う製品が高単価であることから半導体工場の建設や製造調整はスケジュールが非常にタイトです。
建設業関連の専門用語を覚える
どの仕事にも専門分野が存在し、その中での共通言語としての専門用語があります。
知らない言葉は使って覚えるのが一番手っ取り早いですが、プラントエンジニアリングでは
土木、建築、機械、電気など多岐に渡る分野が錯綜するため、何がどの分野の専門用語なのかを
文脈の中で理解して正しく使いこなす必要があります。
『世界で一番やさしい建築用語』
大判ですがイラストが多く分かり易い内容になっています。
また、他の用語集とは異なり、建築工事の仕事の流れに沿って各用語の解説が展開されているため
業務の流れとあわせて専門用語を覚えることができるのが利点です。
シビルを直接担当しない方は、この体裁の方が理解がスムーズなのでお勧めです。
『管工事施工管理用語集』
配管工事に関する専門用語をまとめたものです。各用語の英訳・英和索引や、単位換算表の付録もついているため、
国内プロジェクトはもとより、海外プロジェクトを担当するときに手元にあると、地味に役立つ一冊です。
『絵とき 電気工事基礎用語事典』
電気工事関連の用語を、イラスト中心にまとめているものです。
私自身、電気関連がキャリアの出発点ではなく未だに勉強中で「電気は目に見えないから分からない」という人のため
イラスト付きでイメージとともに解説してくれる本書は、初心者の導入教本として最適です。
専門分野を学ぶための分かり易い入り口になる
プラントエンジニア向けの各専門分野の基礎理解として、
日刊工業新聞社の「絵とき」シリーズ、「今日からモノ知り トコトンやさしい」シリーズを特にお勧めします。
いずれも幅広い分野を扱っている定番シリーズで、プラントエンジニアが携わる専門分野についても
各職種で新人が始めに読むにはうってつけのボリュームと解像度でまとめられています。
専門職として勉強しようとすると、どうしても詳細に(しかし初心者には難解に)書かれた本に価値があると思いがちですが
基礎のきそが分かっていないとレベルの高い専門書は読み解けず、勉強を挫折しがちです。
まずはこれらのシリーズ本から勉強し始め、実務経験を踏まえたうえで不足する分を
さらに詳細な専門書や技術書でカバーしていくのが王道だと思います。
以下、機械・配管・電気の大枠に分けて
上記のシリーズからお勧めの巻をピックアップしました。
(1)機械関連
『絵とき 「ポンプ」基礎のきそ』
『トコトンやさしい ポンプの本』
『トコトンやさしい ボイラーの本』
(2)配管関連
『絵とき 「配管技術」基礎のきそ』
『トコトンやさしい 配管の本』
『トコトンやさしい バルブの本』
(3)電気関連
『トコトンやさしい 電線・ケーブルの本』
『トコトンやさしい 電気設備の本』
まとめ
主に以下の3つのカテゴリに分けて、新人~若手プラントエンジニア向けの書籍を紹介しました。
1.関連する業界の仕組みを理解する
2.建設業関連の専門用語を覚える
3.専門分野を学ぶための分かり易い入り口になる
ポンプやバルブ、配管関連の基礎知識については、各主要メーカの技術ページ紹介などを含めて
本ブログでも過去の投稿でタグ別にまとめておりますので、是非そちらもご参考頂ければ幸いです。
それではまた次回、⛑ご安全に!⛑
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