前回までで、非容積式ポンプのうち遠心ポンプ、軸流/斜流ポンプについてまとめました。
今回は、特殊な用途で用いられるその他の非容積式ポンプとして
・渦流/カスケードポンプ
・キャンドモーターポンプ
・マグネットポンプ
についてまとめます。
一般的な遠心ポンプでは対応できない特殊用途で用いられるケースが多いため、
その構造の特徴と用途を紐づけて理解することが重要です。
渦流/カスケードポンプ
羽根車の外周に、放射状の小さい溝がある構造が特徴です。
羽根車の遠心力と、溝が流体を円周方向に押す力によって渦流れを形成し、
高い圧力で流体を吐き出すことを可能としています。
また、小さい溝の流路に沿って流体を送り出すので、小流量を安定供給できます。
反面、流路が狭いため異物混入による閉塞リスクが高いので、
異物が流れ込むラインには不適で、必要に応じてポンプ入口にストレーナを設けます。
(参考 : 株式会社丸八ポンプ製作所 マルハチカスケードポンプ )
(参考 : 株式会社ニクニ 渦流タービンポンプ【構造説明】 )
キャンドモーターポンプ
キャンドモーターポンプと他のポンプの大きな違いは、回転軸のカップリングの有無です。
キャンドモーターポンプ以外のポンプは、モーター側とポンプ側の軸を
カップリングフランジで締結して動力を伝達しています。
対して、キャンドモーターポンプは、ポンプ軸と電動機軸が一体で
ポンプケーシング内に電動機も取り込んだ構造のため、ケーシングを貫通する軸封部がありません。
よって軸シール部が無いため、ポンプ内部液体は完全無漏洩です。
目線を変えると、移送液体に対し外部からの異物混入が防止されることから
プロセス流体の品質確保が求められる半導体、食料・飲料、医薬プラントなどで採用されます。
軸受けがケーシング内部にあり、移送流体での冷却に頼ることから、空転厳禁です。
また、モーターの回転方向は外観から分からないので、初回起動前の試運転では
モーター回転方向検知器(ロータリーチェッカー)を忘れずに用意しましょう。
(参考 : 株式会社帝国電気製作所 キャンドモーターポンプの送液イメージ動画 )
また、外観からは内部の軸受けまわりの異常を目視検知できないため
摺動熱や異常振動を検知するシステムが組み込まれているものもあります。
(参考 : 日機装株式会社 ノンシールポンプ 異常検知の動作 )
マグネットポンプ
マグネットポンプは、モーター軸がポンプ軸と連結しておらず、
モーター軸側の駆動マグネットと、ポンプのインペラ側の従動マグネットが
磁力を介することで動力を伝達します。
駆動軸がケーシングを貫通しないため、軸シールが不要で軸漏れがありません。
漏洩のリスクが高い薬品や、危険廃液の移送等で良く用いられます。
ポンプのインペラ側の回転軸受の冷却は移送液に頼るため、空転は厳禁です。
また、対となるマグネットの極が嚙み合わなくなることを「脱調/スリップ」と呼びます。
モーター側のマグネットはモーターに依存して回り続けますが、
ポンプ側のマグネットはインペラの異物混入などで回転が妨げられることがあり、
互いの磁極の噛み合いがズレて動力の伝達が出来なくなる状態を指します。
(ミッション車で言う、クラッチが外れた状態)
(参考 : 株式会社イワキ マグネットポンプの作動原理 )
まとめ
特殊な用途で用いられる非容積式ポンプとして、
以下のポンプの構造と特徴、主な用途についてまとめました。
①渦流/カスケードポンプ : 小流量・高揚程で流体を移送したい
②キャンドモーターポンプ : 軸シール部を無くして、ポンプ周辺での流体への異物混入を防ぎたい
③マグネットポンプ : 軸シール部を無くして、ポンプから外部への流体漏洩を防ぎたい
それぞれのポンプが、単純に水を移送する以外の用途で適材適所に用いられます。
構造と特徴と、主な用途を紐づけて理解すれば機器選定がスムーズになります。
今回紹介した、ニクニや帝国電機製作所の公式YouTube動画や、イワキのブログなど
各メーカごとに基礎知識~メーカごとの主力製品・技術がまとめられています。
初心者~若手プラントエンジニア向けな内容となっているので、ご一読されることをお勧めします。
また、ポンプ全般の「やってはいけないこと」を
分かりやすい図解とともに説明している、初心者必読の書籍についてもご紹介します。
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ポンプ以外の「べからず集」については、過去の投稿でまとめていますので是非ご一読ください!
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主な非容積式ポンプについては今回でまとめ終えたので
次回以降は容積式ポンプについて、関連するメーカの特徴と
勉強するのにおすすめなサイトなどをご紹介できればと思います。
それではまた次回、⛑ご安全に!⛑
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