建設業、製造業ともに言えることとして
「新人が覚えなければならない事が多すぎる」ということが挙げられると思います。
建設業と製造業の中間的な知識・スキルが求められるプラントエンジニアリング業界も同様です。
近年では多能工化が求められる時代になり、複数分野にわたる知識・スキルが必要にもなっています。
今回は、過去に私が新人だったころに指導担当の先輩から勧められ、
その後、私が新人を育成する時も良く勧める書籍を紹介したいと思います。
覚えることが多いこの業界ですが、いつも新人に伝えるのは
「覚えなくてはいけないこと」、「やらなくてはいけないこと」よりも、
まずは「やってはいけないこと」を知っておいて欲しい、ということです。
新人が「***のマニュアルを覚えた」「***の講習を受けてきた」という話も嬉しいのですが、
「***ではコレをやってはいけない」という、「べからず」を知っているというのは安心感があります。
「こやればいい」の逆、「こうやってはいけない」もノウハウのひとつ(裏返し)です。
プラントエンジニアが業務で扱っている、プラントを構成する機器類や計器類の取り扱いは、
大きく扱いを誤るとプラントの一部ないし全体の操業を止めてしまい大規模な損害が生じるケースや
施工・操作する本人や周りの仲間の身の安全に関わる事故・災害に直結するリスクがあります。
今回紹介する書籍は、そんな「やってはいけないこと」を
新人向けに分かりやすくまとめた「べからず集」です。
見たことが無い、という新人~若手の方は是非一度ご確認ください。
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一丁目一番地のべからず集
全ての新人にまず始めに読んで欲しい、一丁目一番地のべからず集です。
建設業、製造業の現場において、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」という
言葉を聞いたことが無い、という方はいないと思います。
5Sの考えが肌に染みついて日々現場に出ていると、
「改めて説明するようなもんじゃない」と思ってしまい、
新人への教育が案外おろそかになっていないでしょうか?
5Sとは何のためのものか、何をしてはいけないのか、新人に分かりやすく言語化できますか?
先輩の背中を見て学べ、というのはもうとっくに過去の時代のものです。
そういう意味では、教える側もふとした時に見返すと良い本です。
配管工事関連のべからず集
ざっくり機械 or 電気計装に分けた時の、前者の機械に関する新人向けのべからず集です。
施工から運転、保全に関する事項まで幅広くカバーされています。
フルターンキー契約の案件で機械担当の任につくなら、必携の本。
電気計装工事関連のべからず集
ざっくり機械 or 電気計装に分けた時の、後者の電気計装に関する新人向けのべからず集です。
実は私自身、学生時代はいわゆるシビル関係の分野を専攻していたため
プラント業界に入って一番縁遠く、苦労した(今でも苦労している)分野です。
配管や機械の図面は、まぁ何とか土建図の延長線上で分かるのですが、
電気や計装に関しては、図面も言葉も手探りという状態。
にもかかわらず目の前のプラントでは電気計装の施工が進み、試運転計画の立案も必要。
・・・焦りしかありませんでした。
新人だった当時、まずはこれらのべからず集に目を通して、
踏んだらダメな地雷を把握する、ということが非常に役に立ちました。
保全作業関連のべからず集
保全作業への理解が浅いプラントエンジニアは、時として非常に使い勝手の悪い設備を設計してしまいます。
施工担当者の目が行き届かず、将来的なメンテナンスに支障の出る設備のダメを潰せないまま竣工・引き渡しして、
数年後に顧客の保全担当者から愚痴を聞かされる、ということも良くある話です。
また、保全作業に携わるプラントエンジニアではある程度の経験を積むまでは、
まずはマニュアルと先輩方からスキルを見て学ぶ期間が必要です。
この期間、「マニュアル外のこと」・「先輩がやっていないこと」=「やってはいけないこと」を
具体的な輪郭を捉えて理解し、自身の所作に落とし込むには、想像力を必要として難儀します。
特に保全で必要とされる知識の幅・深さは一朝一夕ではいきません。
焦らずに勉強を継続し、経験を積むこと以外に道はありませんが、
最初のスタート地点として、具体的に言語化・イラスト化された「やってはいけないこと」のインプットは
大きな事故・災害からプラントと自分自身、そして仲間の安全を守るために重要です。
まとめ
各作業の「べからず集」についてご紹介しました。
冒頭でも申し上げた通り、プラントエンジニア(ないし建設業、製造業)に従事する者は
「やらなくてはいけないこと・知っておくべきこと」が非常に多いです。
しかし、その知識・スキルの広さと深さは果てしなく、一朝一夕では身につきません。
新人にまずは理解してほしいのは、「やってはいけないこと」です。
「仕事がやれないのはしょうがない。でもやってはいけないことは、絶対にやるな」と
私は新人の頃に教えを受け、その後私も新人に言い続けています。
なぜなら、プラント(ないし建設業、製造業)の職場では
個人のたったワンアクションでも、とんでもない損害につながる事故や、
自身や仲間の命に係わる災害を、本人が意図せずとも起こしてしまうリスクがあるからです。
新人には、肩に力を入れず、まずは「べからず集」を取って読んでもらい
自身と仲間の安心安全のもとで、一緒に仕事に取り組むことから始めて欲しい
と思っています。
それではまた次回、⛑ご安全に!⛑
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