このような理解のもとにプラントを定義すると、次のように言うことができよう。
『プラント・エンジニアリング』
すなわち、「プラントとは投入された労働力、原材料、資金などのインプットを処理して
目的とする製品(それによる収益をも含め)というアウトプットを算出するために
機械・装置その他関連する諸要素を有機的・体系的に組み合わせた集合体をいう」
(中略)
以上の事柄を念頭に置いて、プラント・エンジニアリングを定義すると「企業体に置いて
人・材料・設備の積極的な目的を持った諸活動のうち、プラントないし設備の研究調査にはじまり、
計画、設計、設置、活用、維持、保全の面に関する技術とそれに対応する管理技術に対し
組織だった体系を付与したものの総称」である。
中井重行、丸善株式会社(1979年)
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プラントエンジニアとして、最初の書籍紹介に取り上げたかった本
プラントエンジニア向けの書籍紹介で、最初に何を紹介しようか考えた時に、
真っ先に候補に挙がったのが、本書「プラント・エンジニリング」でした。
ど真ん中直球なタイトルです。
この本を端的に紹介すると、
「発行から約50年が経ちながらも、現役のプラントエンジニアが読んで
改めて腹落ちする根幹的な要素が言語化・体系化されている本」です。
著者は、早稲田大学理工学研究科でプラントエンジニアリング研究の教鞭をとっていた中井重行教授。
当時の学生向けに、プラントエンジニアリングの全体像を体系的にまとめた本です。
学生向けとあって、筋道立てつつ幅広い範囲をカバーしており、
タイトルの通りプラントエンジニアリングを包括した内容です。
プラントエンジニアリングには、多種多様な専門分野が入り乱れますが、
各分野をアカデミックに掘り下げるのではなく、
・各分野のプラントエンジニアリングにおける意義や目的は何か?
・各分野間の関連性や連続性はどうなっているのか?
について、分かりやすく解説しています。
(参考:早稲田大学理工学研究科 理工学研究科要項 1980年)
この本をお勧めしたい人
・プラント業界に興味があり、どのような体系*なのか知りたい学生
(*自分の専攻と、プラントエンジニアリング全体の位置関係や、仕事の流れの中のポジション)
・プラント業界に就職して1~5年目の新人、若手社員
・プラント業界への転職に興味のある社会人
学科や研究室単位でプラントエンジニアリングを専攻している教育機関は少ないです。
機械、電気、化学系の幅広い分野を出自とする学生が、プラント関連企業に就職し、
専門分野を軸足にプラント業界の各業務と向き合うことになるのが、一般的かと思います。
(参考:マイナビ進学 プラント・エンジニアリング)
私自身、学生時代の専攻分野はプラントエンジニアリングの主流(化学、機械、電気)ではなく
シビル(土木・建築)関連の学部からプラント業界に入りました。
入社から数年間を思い返すと、以下のようなことに悩んでいました。
- プラントエンジニアリングの全体像の理解がぼんやりしていて、
自分の専攻分野が活きる場面がどこなのか、今やっている業務の前後に何があるのか分からない。 - 日々いろいろな分野に触れて都度勉強するものの、プラントエンジニアリングの中での繋がりが分かっておらず
各分野の必要最低限のつまみ食いのようなインプットになりがち。 - 大学で学ぶアカデミックな分野に対し、より実務的なマネジメント業務や、調達・在庫管理、保守・保全などは
関連書籍でhow-toは学べるが、意義や目的について自分の中で適切に言語化ができていない。
これらの悩みについて、本書「プラント・エンジニア」は、その土台を固めてくれる助けになりました。
この本から得られること
・プラント・エンジニアリングの全体像が体系立てて理解できる。
・約50年前に書かれた本だが、全く色あせない本質的な説明がある。
各章の題目から、特に基礎的な理解に役立つと感じたものを抜粋します。
以下のタイトルについて、自分の言葉でどの程度説明できるか?を確認してみてください。
プラント・エンジニアリングの意義、目的
プラント・エンジニアリングの組織
プラント・エンジニアリングの人間の問題
プロジェクト・エンジニアリングの意義と内容
メンテナンス・エンジニアリングの意義、目的、方式
プラント・エンジニアリングにおける見積りの問題
プラント・エンジニアリングにおける原価の問題
エンジニアリング・エコノミー
プラントと標準化および資料管理
まとめ
「これ本当に50年前に書かれた話なの?」と思うほど、本質的な要素を的確に言語化・体系化されています。
逆に言えば、中堅以上のプラントエンジニアでも「年月を経ても変わらない本質的なものの再確認」もできます。
現在は絶版となっています。(そんな本紹介するな)
冒頭にAmazonのリンクを張らせていただいていますが、
古本が出回っていたり、図書館で見つけることが可能だと思います。
是非一度、手に取ってみて頂きたい本です。
それではまた次回、⛑ご安全に!⛑
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