配管内を流れる流体の流速・流量を、管理および制御することは
あらゆるプラントの処理プロセスで重要な要素のひとつです。
プラントで取り扱う流体は、様々な液体・気体であるため
流量計の選定においては以下の点に留意が必要です。
①その流体の流量を測るために、最適な測定原理を用いる
②計器のメンテナンス頻度=ランニングコストを抑える
③流路内に測定器を設けるリスクを許容できるか否かを検討する
(閉塞時はバイパス運用する or 予備ラインに切り替える)
上記①~③の観点から、様々な流量計の種類が存在します。
今回は、前編後編に分けて各流量計の種類と特徴をまとめました。
まず前編では、流路内に測定器を設けるタイプを解説します。
流路内に測定器を設ける流量計6種類
以下の6つの流量計を解説します。
①渦式/カルマン渦式
②容積式/ギア式
③羽根車式/タービン式
④面積式/フロート式
⑤差圧式/オリフィス式
⑥熱式/サーマル式
全般的に言える点は、流路内に測定器があるため、
・圧力損失が生じる
・スケール堆積や異物閉塞するリスクがある
というデメリットを抱えています。
よって、定期的なメンテナンス(清掃、駆動部/消耗品の交換)や
閉塞時にバイパスする or 予備ラインに切り替えられるように
周辺の配管を構成しておく必要があります。
それでは、個別に詳細を見ていきましょう。
渦式/カルマン渦式流量計
流路に障害物(ブラフボディ)を設け、
その後ろに発生するカルマン渦の周波数を測定することで流量を測定します。
液体・気体いずれも測定可能で、測定レンジが大きいメリットがあります。
また、他の流路内に測定器があるタイプと異なり、消耗品となる駆動部ありません。
デメリットは、カルマン渦が発生しない低流速箇所や
流速が変動する脈動箇所には不向きです。
また、流路内に測定器があるタイプ全般に言えますが、
圧力損失が発生する点と、スケール堆積や異物閉塞のリスクがあります。
(参考:東京計装株式会社 渦流量計 動作原理)
容積式/ギア式流量計
流路に歯車(ギア)を設け、その回転数を測定することで流量を測定します。
液体・気体いずれも測定可能です。
直接的に容積流量を測定しているので、流量の変動・脈動があっても採用できます。
エルボ・バルブなどの2次側の管内偏流の影響も受けないので、
設置位置の前後の直管長を考慮せず設置できるメリットもあります。
デメリットは、粘度が低いと精度が下がる(歯車を回さず流体が通過してしまう)点と、
大口径になると歯車部も大きくなり、設置スペースを取る点です。
また、流路内のギアにスケールの蓄積や異物による閉塞のリスクがあります。
清掃の頻度は他の流量計と比べ多くなりがちで、駆動部は消耗品で定期的な交換が必要です。
(参考:株式会社オーバル オーバル流量計の計測原理)
羽根車式/タービン式流量計
流路に羽根車(タービン)を設け、その回転数を測定することで流量を測定します。
羽根車の回転方向が、流れに対して直角なものを風車構造(軸流羽根車式)、
流れと並行なものを水車構造(接線流羽根車式)といいます。
似たような測定方法のギア式と比較すると、
風車構造(軸流羽根車式)の場合は、羽根車のサイズはある程度に抑えられるので、
配管口径が大きくなっても、設置スペースが広がらない点がメリットです。
デメリットもギア式と同じく、スケールや異物による閉塞リスクと
駆動部が消耗品で定期交換が必要となる点です。
軸流式
接線流式
(参考:株式会社日本計量新報社 計量計測データバンク 水道メーター)
面積式/フロート式流量計
テーパー管の内部に浮き子(フロート)を設け、
フロート重量による下向きの力 vs 管内流の上向きの力 が
釣り合った点を測定することで、流量を測定します。
気体・流体いずれも計測可能で、流路内に測定器を設けるタイプの中では
圧力損失が比較的小さくて済むのがメリットです。
デメリットは、測定精度が高くない点と、設置箇所が縦配管部(上向き流れ)に限定される点です。
他同様にスケールや異物による閉塞がリスクとなり、
テーパー管の目盛りを直接読むタイプは、テーパー管の清掃頻度も高くなります。
金属製で信号出力も可能なタイプ
ガラス製のテーパー管で現場指示のみのタイプ
(参考:東京計装株式会社 面積流量計)
差圧式/オリフィス式流量計
流路にオリフィス板を設け、前後の差圧を測定することで流量を測定します。
気体・流体いずれも計測可能で、流路内に測定器を設けるタイプの中では
比較的コストを低く抑えることが出来ます。
また、配管口径とオリフィス穴径の関係が、規格に従って製作されているため取り付け後の校正作業が不要です。
(JIS Z8762-1:2007 (ISO 5167-1:2003) 円形管路の絞り機構による流量測定方法)
他と比べ測定範囲が狭く、測定精度が低い点がデメリットです。
また、前後の直管がある程度長くないと測定精度がたもたれず、
流路内に測定器を設けるタイプの中では、圧力損失が最も大きくなります。
主管の計測部は差圧式、流量目盛り部は面積式
(参考:東京計装株式会社 差圧式流量計)
熱式/サーマル式流量計
流路にヒーターを設け、前後の温度差を測定することで流量を測定します。
気体・流体いずれも計測可能で、流路内に測定器を設けるタイプの中では
圧力損失が比較的小さい点がメリットです。
デメリットは、温度が変動する流体では誤差が出てしまう点と
ヒーターの加温による温度差が測定可能な、小流量な箇所での使用に限られる点です。
(大口径の配管やダクトのガス流量測定に用いる、挿入式のものもあります)
(参考:株式会社オバール 熱式質量流量計の計測原理)
まとめ
流路内に測定器を設ける流量計6種類について解説しました。
①渦式/カルマン渦式流量計
②容積式/ギア式流量計
③羽根車/タービン式流量計
④面積式/フロート式流量計
⑤差圧式/オリフィス式流量計
⑥熱式/サーマル式流量計
全般に共通した留意点は
・圧力損失が生じる : そのラインの圧力損失の許容範囲に応じて選定する
・閉塞リスクがある : バイパス or 予備ラインを設けておく
の2点です。
次回の後編では、流路内に測定器を設けない流量計3種類を解説します。
⑦質量式/コリオリ式流量計
⑧超音波式流量計
⑨電磁式流量計
それではまた次回!⛑ご安全に!⛑
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