プラントエンジニアとは切って離せない一方で、
老若男女問わず、皆さんも毎日触れているものがあります。
それは・・・「バルブ」です。
皆さんは、毎日バルブを開け閉めしています。
水道の蛇口やトイレの水洗は、バルブを開閉することで水を流しています。
(最近は手動ハンドルではなく、センサーでの自動式が多いですが、動かしているものはバルブです)
日常生活で触れるバルブの種類は限られますが
様々な流体を取り扱うプラントでは、バルブの用途も様々です。
今回は、主要なバルブの種類とその特徴についてまとめました。
ニッチな用途のバルブは、特定業界以外ではあまりお目にかからないため
この記事を見ておいて、「あ、あの時やったやつだ!(某児童教材風)」と思い出して下さい!
主要なバルブ6種類
以下の6種類のバルブについて、一般財団法人 日本バルブ工業会のサイトで
内部の流路や、開閉の弁体動作、特徴や注意点が解説されています。
Youtubeの動画付きで非常にわかりやすいです。
①玉形弁・グローブ弁
②仕切弁・ゲート弁
③ボール弁
④バタフライ弁
⑤逆止弁・チャッキ/チェック弁
⑥ダイヤフラム弁
(参考:一般社団法人 日本バルブ工業会)
止水性が良く、流量調整にも優れます。
圧力損失が大きく、開閉時のハンドル操作にトルクと時間を要します。
玉形弁≠ボール弁ではないので注意。弁箱が玉形なのでそう呼称されますが、
ボール弁(こちらは弁体が玉形)と混同しやすいので、「グローブ弁」と呼ぶ方がベターです。
(参考:株式会社キッツ グローブ弁)
止水性は良いですが、弁体と弁座に負荷がかかり破損の原因となるため中間開度での使用はNGです。
開閉時のハンドル操作にトルクと時間を要します。
また、全開時のハンドル昇降クリアランスを設ける必要があります。
用水路などで見かける水門でも、大小のスライドゲート弁が使われています。
動きはギロチンに似ています(弁体がストーンとは落ちませんが)
(参考:株式会社キッツ ゲート弁)
止水性に優れますが、弁体シートの摩耗を促進し破損の原因となるため中間開度での使用はNGです。
圧損は小さく、開閉時のハンドル操作が容易ですが、急な開閉によるウォータハンマや誤操作に要注意です。
中間開度で使用して、流量調整が可能です。
ハンドルの形が、ギア式・レバー式の2種類あります。
前者の方がより細かい開度調整が可能です。
(参考:全研本社株式会社 バタフライ弁まるわかりガイド)
開閉時のハンドル操作が容易ですが、急な開閉によるウォータハンマや誤操作に要注意です。
シートの材質選定(耐熱・耐食)が肝で、ここを誤るとシートリークによるトラブルの原因となります。
ウェハ式のものは設置スペースを取らない利点がありますが、
エルボや他機器が近接していると、開くときにシートが接触する恐れがあります。
開操作時のシートとの最低離隔に注意が必要です。
(参考:巴バルブ株式会社)
一定方向のみ通水し、逆流時には弁体を閉じることで逆流を防止します。
逆流によるコンタミ防止や、機器保護のために用いられます。
異物を噛みこむと、正常に機能しなくなるため注意が必要です。
動作原理により、リフト式、スイング式、ディスク式/スプリング式、などに分類されます。
流れ方向だけでなく、取り付け向き・位置(縦向き/横向き、ポンプやエルボからの離隔)にも
制約がある場合があります。
(参考:株式会社キッツ 逆止弁(チャッキ弁))
微量な流量調整が可能です。開閉時のハンドル操作に時間を要しますが、必要トルクは小さく済みます。
ダイヤフラム(隔膜)の材質選定(耐熱・耐食)が肝で、ここを誤るとシートリークによるトラブルの原因となります。
(参考:日本ダイヤバルブ株式会社)
バタフライ弁、ダイヤフラム弁のシート材質選定や
樹脂製のボール弁、チャッキ弁などを使用する際の弁体材質選定は
前回記事の各メーカ耐食表が参考になります。
特殊な用途のバルブ3種類
その他に、限られた用途で用いられるバルブを3種類、紹介します。
グローブ弁に似ていますが、弁体の先端が先細り、針のような形状になっています。
より微量な流暢調整が可能で、小径ラインの末端での微調整に使用されるケースが多いです。
ガスなど、グローブ弁では対応しきれないシビアな流量調整箇所でよく用いられます。
(参考:Metoreee 【2023年版】ニードルバルブメーカ25社一覧)
弁体内部にチューブの流路があり、チューブを押しつぶすことで流量調整や止水をします。
ダイヤフラム弁だと隔膜の摩耗の恐れがあるスラリーのラインや、
弁体からの異物リークが無いという利点から、医薬品・食品類のラインで用いられます。
手動ハンドルのものもありますが、口径が大きくなるとチューブを押しつぶす力も大きくなるため、
空気圧での締め込みをする形式が多いです。ユーティリティとしてエアが必要な点に注意しましょう。
(参考:エスビーバルブ株式会社)
自給式ポンプの吸込み管末端に取り付ける逆流防止のためのバルブです。
自給式ポンプが停止時に落水してしまうと、再起動時に空気を吐き出す必要が生じるため
水が抜けないようにするためのものです。
水槽内の配管端部に設けられるため、点検がしにくいケースが多いです。異物の嚙み込みに注意が必要です。
(参考:株式会社AMU冷熱 フート弁とチャッキ弁の違いは何?特徴や仕組みの違いを解説)
まとめ
今回は、主要な用途のバルブ6種類と、特殊な用途のバルブ3種類の
計9種類について解説しました。
主要な用途のバルブ
①玉形弁・グローブ弁
②仕切弁・ゲート弁
③ボール弁
④バタフライ弁
⑤逆止弁・チャッキ/チェック弁
⑥ダイヤフラム弁
特殊な用途のバルブ
⑦ニードル弁
⑧ピンチ弁
⑨フート弁
個別のバルブごとの突っ込んだ解説や、自動弁/調整弁と手動弁の考え方、
ハンドル操作の無いバルブ(安全弁、背圧弁、定流量弁など)についても、また別の機会で解説していきます。
バルブ選定とその周辺配管設計は、創意工夫と設計思想の宝庫でネタが尽きそうに無いですね。
それではまた次回!⛑ご安全に!⛑
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