前回記事で「プラントを人体に例えると、配管は血管のようなもの」と例えました。
人体の血管内は血液が流れますが、プラントでは、様々な気体・流体・粉体 etc…が配管内を流れていきます。
配管材料と流体の相性が悪いと、配管はすぐに破損して漏洩が生じます。
いくつかある配管破損の原因のひとつに、配管の腐食があります。
配管設計では、腐食による漏洩を防ぐための材料選定が重要となります。
まったく劣化しない配管は存在しないため、流体に対して適正な耐食性を持たせる必要があります。
ここでいう「適正な」とは「配管の耐食性=耐久期間」x「プラントの稼働予定期間=配管交換頻度」
に対して「リーズナブルなコストの配管材」を選定することです。
また、配管同士や機器との接続部は必ず生じます。
接続部からの漏洩を防ぐために用いられるパッキン・ガスケットも長期的には消耗品扱いですが、
適切な耐食性を持たせ、不意な漏洩を防ぐとともに、交換寿命を延ばすことが重要です。
今回は、耐食性に優れた樹脂・エラストマを中心に
材質選定に役立つ 各メーカの耐食評価表 についてまとめました。
これを見れば、
「あの流体って、配管とガスケットって何を使えば大丈夫だったっけ?」
の答えを、すぐに見つけることができます。
樹脂材の耐食性
樹脂材は、国内2大メーカである 旭有機材株式会社 と 積水化学工業株式会社 の資料が非常に充実しています。
2社の資料で、ほとんどの工業薬品x樹脂・エラストマの耐食性を確認できます。
各工業薬品 x プラスチック・エラストマ の耐食表*1で、
薬品ごとに濃度・温度別の評価があります。
また、同様のフォーマットで同社の耐酸ガスケットであるバイフロン*2について
無機酸に強いバイフロンF(FKM-F)
塩素系に強いバイフロンC(FKM-C)
の耐食表も、各酸類の更に詳しい濃度・温度別でまとまっています。
(参考*1:旭有機材株式会社 ASAHI AV 耐薬品性表)
(参考*2:旭有機材株式会社 ASAHI AV バイフロン® 耐薬品性表)
こちらも同様に、各工業薬品 x プラスチック・エラストマの耐食表*3で
SUS304 と SUS316 の項目もプラスアルファされているのが嬉しいところです。
薬品の濃度・温度別の評価もあります。
(参考*3:積水化学工業株式会社 エスロンプラスチック管材の耐薬品性一覧表)
パッキン・ガスケットの耐食性
パッキン・ガスケットは、こちらも国内2大メーカである
ニチアス株式会社 と 株式会社バルカー の資料が非常に充実しています。
前者は商標の「トンボ(TOMBOシリーズのガスケット)の****番(型番)」の方が多用されますね。
先の樹脂材で紹介した2社の耐食表にもエラストマの記載があるため、
さらにガスケットメーカの2社を加えれば向かうところ敵なしです。
各工業薬品 x エラストマ・金属の耐食表*4で
細かい油種や、食品関連の流体まで幅広くカバーされています。
(参考*4:ニチアス株式会社 工業用材料の耐薬品性及びガスケットの選定)
個別型番ごとのカタログ*5を確認する必要がありますが、
各工業薬品 x エラストマ の耐食表がまとまっています。
(参考*5:株式会社バルカー カタログ一覧)
PEタンクの耐食性
PEタンクの耐食表も、主要メーカの スイコー株式会社 と ダイライト株式会社 が
それぞれまとめています。タンクの貯留流体と、タンク本体材質の耐食性の確認に用います。
タンクの主材料となるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)の耐食表*6です。
エラストマ(EPDM、FKM/PTFEのみ)についても記載有りますがFKMとPTFEを一括りにしており、
前述の 旭有機材株式会社 や 積水化学工業株式会社 の耐食表の方が濃度・温度別でより詳細です。
(参考*6:スイコー株式会社 耐薬品性一覧)
タンクの主材料となるポリエチレン(PE)の耐食表*7。
こちらも同様にエラストマ(EPDM、FKMのみ)記載あり。
(参考*7:ダイライト株式会社 ポリエチレン樹脂耐薬品性、接液面パッキンの耐薬品性)
ホースの耐食性
株式会社トヨックスが、ホース材質ごとの耐薬品性を幅広くカバーしてまとめています。
各プラント業界で取り扱われる幅広い流体 x ホース内面材質 の耐食表*8。
ガソリン から ミルク で、ありとあらゆる産業をカバーしていて、業界シェアも垣間見えます。
(参考*8:株式会社トヨックス ホース耐薬品表)
まとめ
樹脂とエラストマの耐食性について、
・樹脂材メーカ
・ガスケットメーカ
・PEタンクメーカ
・ホースメーカ
の主要企業をピックアップして、流体と各材料の耐薬品性情報をまとめました。
配管材の記事と同様、私は各メーカ資料を過去何百回アクセスしてお世話になったものか、という頻度で閲覧しています。
ここにない特殊な排液・排ガスなどの場合は、成分表をもとに各メーカにヒアリングが必要になりますが、
私の経験上、上記の参考資料でも耐食性が確認できないケースは、かなり限られます。
材質以外の観点でのガスケット選定の考え方などは、また別の機会で説明します。
それではまた次回!⛑ご安全に!⛑
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