前回に引き続き、プラントエンジニアの働き方や給与について、詳しく解説します。
設計・調達業務から施工管理、保守管理まで、異なる職務ごとの勤務時間や勤務地、給与の特徴を紹介します。
数字や統計データを使いながら、プラント業界の働き方や給与について
具体的な情報を踏まえて、プラントエンジニアに興味を持っていただけることを期待しています。
業務形態の概要 +
職務 | 勤務時間 | 勤務地 | 出張/転勤 |
設計・調達など内務中心 | 165時間/月 | オフィスワーク中心 近年は在宅勤務増加 | 試運転時には 現場に中長期出張も |
施工管理、試運転 保守管理などサイト中心 | 172時間/月 | 建設現場/工場中心 各地を回る施工部隊と いち工場に定着する保守管理 | 原則長期出張ベース 経験年数を積むため数年での異動はしない 保守管理は異動少なめ |
それぞれ、個別に解説していきます。
細けぇこたぁいいんだよ、いくら稼げんだ? という方は、一気に末尾までスキップしてください!(笑)
プラントエンジニアの勤務時間 +
日本版O-NETより、プラント設計技術者 と 建築施工管理技術者 の勤務時間を引用しました。
正直、現実とギャップを感じる数字ではありますが、
キツかった仕事の経験からバイアスがかかって見てしまっている面もあります。
それぞれの企業、案件、現場/工場によって状況は異なるので、
全般的に言えるであろう、勤務時間が増えてしまう要素を詳しく解説します。
(参考リンク:日本版O-NET プラント設計技術者 、 建築施工管理技術者)
各職務の勤務時間が増加する要素は、以下です。
・設計、調達など内務系
短納期案件の対応は、どうしても残業によるキャッチアップが選択肢に挙がります。
プラント立上~引き渡し時は、現場試運転・性能確認試験の立会のため
オフィスワーク時よりも勤務時間が増えがちです。
・施工管理、試運転、保守管理
短納期案件の対応は、設計同様に残業によるキャッチアップが選択肢に挙がります。
プラント立上~引き渡し時は、現場試運転・性能確認試験が
24時間運転(≒実操業)となる期間があります。全体工程の終盤追い上げ期でもあるため、
工程前半の建設期間よりも勤務時間が増えがちです。
他方で保守管理の業務は、規則正しい交代制なので勤務時間は安定しています。
定期修理期間中は、プラントの生産性が落ちないようにスケジュールを詰めるため
細かい社内外調整や非定常業務によって、勤務時間が増えがちです。
・最近の動き
ノー残業デーの励行 や 週休2日制モデル工事の試行 など
プラント業界にも働き方改革の波が押し寄せています。
人手が足りない+残業はできない というダブルパンチの課題に、
各プラントエンジニアリング企業(というか産業界全体)が、
しゃかりきになって業務改革に取り組んでいます。
(参考リンク:国土交通省 働き方改革・建設現場の週休2日応援サイト)
東京オリンピックを境に、この取り組みに対する雰囲気がガラっと変わりましたね。
(というかオリンピックを間に合わせるためにそれまでは・・・という話で。大阪万博?知らんなぁ?)
最近は「2024年問題」として騒がれ始め、業界に変革が求められている状況です。
ここで述べた話も、過去の私の経験ベースです。旧態依然では人は離れ、新たに参入もせずピンチです。
それぞれの勤務時間増加要素に対してノーリアクションな企業風土か?は就活・転職時の判断材料になります。
初めに勤務時間を取り上げると、正直ポジティブな話題を見つけにくい業界ですが、
この後で触れていく給与形態(コレよコレ!という方もいらっしゃるでしょ?)など、
「ホントのとこ、どうなの?」という話題で、少しでもプラント業界に興味を持ってくれる
読者の方が増えれば嬉しいです。
プラントエンジニアの勤務地 +
各職務の勤務地の傾向は以下の通りです。
・設計、調達など内務中心
オフィスワークが中心で、コロナ禍以降は在宅勤務がベースの企業が増えています。
私も、コロナ禍以降はほぼ在宅か現場出張での勤務が主で、
現在はオフィスに出社するのは年に1~2回です。
顧客や関係会社との会議もオンライン中心なので、スーツはクローゼットの奥でずっと眠っています。
(革靴にはカビが生えてほとんど廃棄しました…)
・施工管理、試運転、保守管理
建設現場/工場が中心で、オフィスや在宅勤務の機会は少ないです。
海外プロジェクトにアサインする場合は、海外現地法人への出向・駐在となるケースも。
現場でも様々な側面でDXは進んでいますが、在宅でのリモート業務とは中々いかない職種です。
「プラントは会議室で作ってるんじゃない、現場で作ってるんだ!」 (世代です)
施工管理と試運転は、案件ごとに勤務地(出張先)を転々とするのに対して
保守管理は、プラントがある一つの地域に定着して業務に就くことがほとんどです。
なので、後者は地元採用枠があるケースもあります。
国内外問わず色々な場所に行ってみたいか、決められた場所に定着したいかで
職務の希望が分かれるところです。
私のキャリアのスタートは前者の現場畑でした。
旅行の趣味は無い人間でしたが、仕事のおかげで(交通費・宿泊費は会社の経費!)
全国津々浦々を見て回れたことは貴重な人生経験でした。
(入社して数カ月で沖縄出張、北海道のド真ん中で-20°のなか現場で年越し etc…)
プラントエンジニアの出張/異動・転勤 +
勤務地で触れた出張事情は割愛し、異動・転勤について解説します。
異動は会社や個人のキャリアデザインにより千差万別ですが
一般的に施工管理に配属されると、各種工事管理技士などの資格取得の都合上、
実務経験を積む必要があるため、3~5年は異動しないというケースが多いでしょう。
大手ハウスメーカーの社員が数百人単位で、実務経験不足にも関わらず
施工管理技士の試験を受験し、資格取得していたことが報道にもなりました。
ここ最近は以前よりも、実務経験を明確に定義して、厳しく見られるようになっています。
(参考:国土交通省 技術検定不正受験防止対策検討会【提言】)
また、勤務地について「保守管理はプラントがある一つの地域に定着する」と書きましたが
大手メーカ工場だと、各地方工場間での人材ローテーションや、
残念ながら工場が閉鎖してしまう、というパターンがあります。
ただし、本人の事情や希望もあるためいずれも頻度・機会は多くありません。
前回も書きましたが、プラント業界は高い専門性を持つエンジニア集団で成り立っているので
2~3年で異動を繰り返すよりも、中長期的にその部署で専門性を伸ばすことが多いです。
スペシャリスト達をまとめ上げるゼネラリストもプロジェクトマネージャー職として
一定数必要ですが、いきなりその道に入るのは難しいでしょう。
まずは何か一つの分野のスペシャリストを目指すキャリアプランがスタンダードです。
特に若手の内は、中途半端なゼネラリストよりも数年でも突き詰めた一分野がある方が
転職活動でもアピールポイントが作りやすく、専門家を必要とする業界のため
ピンズドの求人に対するマッチング性が良いです。
プラントエンジニアの所定内給与 +
大変お待たせいたしました、お金の話です。(笑)
初めに、 所定内給与(残業代や諸々の手当を除いた給与) についてです。
こちらもまずは日本版O-NETより、
プラント設計技術者 と 建築施工管理技術者 の数字を引用しました。
全国平均年収で
プラント設計技術者 606.2万円
建築施工管理技術者 620.4万円
となっています。個人的な肌感覚としては、そんなに外れていません。
(もっともらってるやろ!という方、是非お勤め先を教えてください。転職先に検討します)
プラント設計技術者の給与分布は、下記の通りになっています。
横軸が月額給与で、縦軸が割合です。どのあたりの給与取得者の割合が多いのか?が分かります。
業種的に近しい「建築設計技術者」のグラフも続けて並べますが、
比較すると、以下の特徴が見えてきます。
👇プラント設計技術者
👇建築設計技術者
(参考リンク:日本版O-NET プラント設計技術者 、 建築施工管理技術者 より引用)
① 給与分布は変わらない。ピークは45万円/月。
② 建築設計技術者と比べ、プラント設計技術者の給与分布は頂点が2つに分かれる。
これは、大手ゼネコンのように、従前の年功序列型の人事制度で出世とともに給与が伸びる業界と
スペシャリストが多く、ゼネラリストを経てマネージャーとなる人材に二極化しやすい業界の差と推察します。
これだけ見ると、プラント業界よりもゼネコン業界の方が良さそうに見えますが、
「終身雇用制度・年功序列型の給与制度」は崩壊すると言われています。
成果主義や能力主義が給与評価により反映される時代が来ることを踏まえると、
スペシャリストがより評価される流れになるでしょう。
これはプラント業界には朗報だと思っています。
プラントエンジニアの所定外給与(コレよコレ!) +
最後に、所定外給与(休日/深夜残業代、出張手当、宿泊手当、移動手当) についてです。
多くのプラントエンジニアにとって、これが重要な支柱であることは間違いありません。
プラント設計技術者は、残業+試運転時の現場出張手当などで
先の給与内所得にプラスアルファされますが、これは波がある所得です。
一方で、プラント技術者でも海外案件で長期出張しているケースや、
施工管理担当者のように、ほぼ常時出張状態となる職制では、この所定外給与がバグります。
バグる理由は主に以下の3つです。
① お金を使う場所が無い
市街地のド真ん中にプラントは建ちません。
環境的にお金を使う場所が少ないので、自然とお金が貯まります。
② お金を使うヒマがない
若い頃は特に・・・。また、プラント設計者が現地に出張する場合は
試運転や性能確認試験のケースが多いため、スケジュール的にもタイトです。
ほぼ宿と現場の往復のみの日々が、数週間続いたりします。
③ 現地の通貨の円為替レートが有利
プラントが必要となる外国=社会・産業インフラが成長している発展途上国が多いため
基本的にその国の通貨に対し円高であるケースがほとんどです。
現地での支払いには円ベースで支給される手当を使用しますが、
日本国内での支払いよりも安価にサービスを享受することができます。
私の父もプラントエンジニアで、20年以上前の話でしたが、
「この前ベトナムで3円で散髪してくた。日本で髪切る気にならん」と語っていました。
企業の手当の厚さにもよりますが、食費もある程度つく企業もあります。
また、宿泊費手当もホテル代の実費精算ではなく、
「ある一定額を支給するから、その中で好きにして」というケースも多く、
安宿やマンスリーマンション、同僚同士で賃貸をルームシェアで済ませれば、
日々手元に差額が残ります。長期出張だと、これがかなりの額に積み上がります。
私の場合、20代半ばに国内の長期現場にアサインしていた頃
年功序列型の所定内給与は20万円/月そこそこでしたが、所定外給与と諸々の手当がその倍以上で
給与口座には毎月60万以上が振り込まれる、という期間が続きました。
(忙しすぎて、給料口座を確認したのは現場が終わるころで、知らないうちに蓄財できて驚きました)
また、オフィスワークのプラント設計者が残業代で得た所定外給与は課税対象ですが
現場出張中の宿直手当・日直手当の支給は上限4,000円まで非課税となります。
上記の手当で給与が伸びた翌年に、何らかの事情で収入が下がったとしても
税金が高くなって大変ということになりにくい、という利点があります。
(参考:国税庁 法第28条≪給与所得)関係)
まとめ
プラントエンジニアの業務形態について、「ホントのとこどうなの?」に
具体的な数字を交えつつ、実情を解説しました。
- 勤務時間は他業種と比べると増えがちだが、働き方改革の波が来ている。
- 勤務地は設計などの内務はオフィス/在宅が中心、現場部隊は長期出張がベース。
- 転勤/異動は少な目。特に資格取得のための実務経験を積む期間は必須。
- 所得は、所定外給与によってバグる。若いうちに稼ぐならプラントエンジニア!
いかがでしたしょうか?
私自身は、また新卒から人生やり直せるとしても、またプラントエンジニアの世界に飛び込むと思います。
皆さんの参画をお待ちしています!
それではまた次回!⛑ご安全に!⛑
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