潤滑油とグリースの違いや使い分けに自信はありますか?
潤滑油とグリースの基本を押さえることは、設備の効率や寿命を左右する重要なポイントです。
特に、潤滑油とグリースの適切な使い分けを理解することは、
機械の性能を最大化し、メンテナンスコストを削減する鍵となります。
本記事では、潤滑油とグリースの種類、規格、そして使い分けについて分かりやすく解説します。
まずは基本をしっかり学び、その重要性を実感しましょう!
潤滑油の規格、ISO粘度分類(VG)について
潤滑油は、機械の摩擦を減らし、動作をスムーズにするために使用されます。
その性能を評価する基準として、ISO粘度分類(ISO VG)が一般的に用いられています。
ISO VGとは?
VGは”Viscosity Grade”(粘度等級)の略であり、潤滑油の粘度を標準化するために設定された国際的な分類です。
ISO粘度分類は、40℃での動粘度(単位:cSt、mm²/s)を基に潤滑油を分類する規格です。
例えば、ISO VG 32は40℃での動粘度が32 cSt(mm²/s)の範囲内にあることを示します。
ISO VGごとの特性と用途
ISO VGの値が異なると、以下のような特性が変化します。
- 粘度と流動性
- 低いVG値(例:ISO VG 22)
:粘度が低く、流動性が高い。低温環境や高速回転する部品に適する。 - 高いVG値(例:ISO VG 150)
:粘度が高く、流動性が低い。高負荷や高温環境での使用に適する。
- 低いVG値(例:ISO VG 22)
- 油膜の厚さと形成
- 低いVG値
:薄い油膜が形成されやすいが、高速運転には十分。 - 高いVG値
:厚い油膜を形成しやすく、重負荷時の保護性能が高い。
- 低いVG値
- 用途と使用箇所の回転速度の目安
- 空気圧機器、低圧油圧機器: ISO VG 22–46、回転速度が高めの箇所(例:5000 rpm以上)。
- 機械摺動部、高圧油圧機器: ISO VG 46–68、通常500–3000 rpm程度。
- 中~高速ギア減速・変速機: ISO VG 68–100、回転速度1000–3000 rpm程度。
- 低~中速ギア減速・変速機: ISO VG 150–220、回転速度100–1000 rpm。
- ウォームギア減速・変速機: ISO VG 220–320、高トルク・低回転(例:100 rpm以下)。
ASTM規格、潤滑油の色と交換の判断について
潤滑油の性能維持と適切な交換タイミングを見極めるには、ASTM規格に基づく分析が役立ちます。
ASTM規格とは?
アメリカ材料試験協会(ASTM: American Society for Testing and Materials)が制定する試験方法で、
潤滑油の酸化、汚染、粘度変化などを評価するための基準です。
色と交換時期の目安
潤滑油の色が黒っぽくなったり、粘度が大きく変化している場合は交換を検討すべきサインです。
ASTM規格では、潤滑油の酸化や汚染を評価するためにD1500(色指数)の試験方法が使用されます。
この試験では、潤滑油の色を数値化し、1.0(新油に近い淡色)から8.0(非常に濃い色)までの段階で評価します。
一般的に、新油の色指数から+2.0ポイント変化したら酸化劣化の兆候とされ、交換が推奨されます。
定期的なサンプル分析を行い、性能低下の兆候を早期に把握しましょう。
潤滑油とグリースの違い、使い分け
- 潤滑油の特徴
:流動性が高く、主に高速回転する部品や細かい機構の潤滑に適しています。- 使用例:ポンプ、ギアボックス、タービン
- グリースの特徴
:粘度が高く、潤滑油に増ちょう剤を加えたもの。高負荷や水分・埃が多い環境での使用に適しています。- 使用例:軸受、ヒンジ、チェーン
- 使い分けのポイント
:潤滑油は冷却効果が必要な場合や高速運転に適しています。
一方、グリースは頻繁に補充できない箇所や、潤滑油が漏れやすい環境で有効です。
項目 | 潤滑油 | グリース |
---|---|---|
冷却効果 | 高い 部品の熱を効果的に除去する | 低い 熱の除去には不向き |
洗浄効果 | 高い 部品の汚れを洗い流すことができる | 低い 洗浄には不向き |
防錆効果 | 比較的高い 定期的な交換が必要 | 高い 長期的な防錆効果を提供 |
対象の回転速度 | 高速回転(数千rpm以上)に対応可能 | 低速から中速(数百rpm程度) |
密封効果 | 低い 密封には別途シール材が必要 | 高い 埃や水の侵入を防ぐ |
外部漏れ量・リスク | 高い 漏れやすい | 低い 高粘度のため漏れにくい |
耐荷重性 | 低い 高荷重には適さない | 高い 高荷重の箇所で優れた性能を発揮 |
ゴミのろ過 | できる フィルターを併用する | できない ゴミが溜まりやすい |
取替え・交換の容易さ | 容易 ドレンを使って排出可能 | 難しい 手作業での除去が必要 |
潤滑性能 | 広い温度範囲で安定した潤滑性能を提供 | 特定の環境や条件下で有効 |
まとめ
潤滑油とグリースの基本を押さえることで、適切なメンテナンスが可能になります。
ISO VGやASTM規格を活用して、設備に合った潤滑剤を選定しましょう。
また、交換時期の判断や使い分けを理解することで、設備のトラブルを未然に防ぐことができます。
👇機械の潤滑に関する基礎知識のおススメ書籍です👇
コメント