プラントエンジニアの皆さん、特にこれから現場経験を積む初心者の方に向けて、
今回はボルトナットの「ゆるみ止め」に焦点を当てた解説をお届けします。
機器や配管フランジの締結には欠かせないボルトナットですが、締結力を損なう大敵は「ゆるみ」。
その原因とメカニズムを理解し、適切な対策を取ることで、安全で効率的な施工・保守が実現できます。
この記事では、具体的なゆるみ止め手法や活用できる製品も交えながら、わかりやすくご紹介します!
ボルトナットのゆるみの原因と対策方針
なぜボルトはゆるむのか
ボルトナットがゆるむ主な原因は、振動、温度変化、外部からの衝撃、材料のクリープなどです。
例えば、稼働中のポンプやコンプレッサーでは、機械の振動がボルトに繰り返し作用し、徐々に締結力が低下します。
また、高温環境では金属が膨張と収縮を繰り返すことで、締結力に影響が及ぶこともあります。
これらのメカニズムを正しく理解することが、対策を講じる第一歩です。
ねじのゆるみの原理については、以下のサイトが非常に参考になります。
(参考:ハードロック工業株式会社 ねじ締結技術ナビ)
ゆるみ止めの対策を大別すると
ボルトナットのゆるみ止め対策は、大きく「機械的対策」と「化学的対策」に分類されます。
機械的対策
これは、ナットや座金、特定の形状を持つ部品を使用して物理的にゆるみを防ぐ方法です。
多くの方法がこの機械的対策で、例として、溝ぞ付きナットやばね座金などが挙げられます。
これらは設置が容易で、振動や衝撃に対して高い効果を発揮します。
化学的対策
化学物質を利用して締結部分を固定する方法で、ゆるみ止め接着剤が代表例です。
この方法は、部品の再利用が難しくなることがある一方で、強力な固定力を提供します。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、現場の状況に応じて選択することが重要です。
ゆるみ止めの手段と仕組み
溝付きナット
- 原理や機構
:ナット側面に溝を付け、ピンやワイヤーで回転を防止します。
見た目が西洋式の古城のようにみえるため、「キャッスルナット」とも呼ばれます。 - メリット
:機械的にボルトとナットが固定されるため、脱落やゆるみの防止に信頼性があります。
また、ピンの脱着により分解時も再利用も可能です。 - デメリット・注意点
:ピンの取付位置が規定トルクで締めた位置と合わないため、
厳密なトルク管理には向きません。
止めねじ法
- 原理や機構
:ナットとボルトに共穴を開け、いもねじを入れて固定します。 - メリット:
:機械的にボルトとナットが固定されるため、脱落やゆるみの防止に信頼性があります。
割りピンよりも振動や衝撃に強いです。 - デメリット・注意点
:ボルトに加工が必要で、強度が低下する可能性があります。
また、イモネジの寸法に制約があるため小径のボルトには向きません。
舌付き座金
- 原理や機構
:座金の一部が曲げられ、ボルトの側面に舌が接触して回転を防ぎます。 - メリット
:細かい加工がないため設置が簡単で、部品の追加も不要です。 - デメリット・注意点
:強い振動環境下では効果が薄れることがあります。
また、舌付き座金を曲げて固定する前のスペースが必要なため、狭隘な箇所には不向きです。
ゆるみ防止板
- 原理や機構
:ボルトとナットの間に板を追加し、板を別途ビスなどで固定します。 - メリット
:耐久性が高く、再利用が可能です。 - デメリット・注意点
:ゆるみ防止板を固定するための追加加工や余剰スペースが必要です。
スリットナット
- 原理や機構
:ナットの端部にスリット(切れ目)を入れ、締めると弾性変形して締結力を増加させます。 - メリット
:シンプルな構造で、他の加工ナットと比べコストを抑えることができる。 - デメリット・注意点
:スリットがある側を上側にしないと効果が無いため、施工時の取付向きに注意が必要です。
ダブルナット(下ナット逆転法)
- 原理や機構
:2つのナットを使い、上ナットに下ナットを戻すように締め付けてゆるみを防止します。 - メリット
:安価で汎用性が高い方法です。 - デメリット・注意点
:下ナットを戻すため、締結力(ボルト軸力)が低下します。
また、締め方を間違えると効果を発揮しません。
(参考:ハードロック工業株式会社 ねじ締結技術ナビ)
ナイロン付きナット
- 原理や機構
:ナット内にナイロンリングが入っており、締結時の摩擦力が増してゆるみを防止します。 - メリット
:設置が簡単で、その他の金属製ゆるみ止めナットよりも安価です。 - デメリット・注意点
:高温環境ではナイロンが劣化するため、効果が発揮されないため使用温度に注意が必要です。
ゆるみ止め接着剤
- 原理や機構
:ボルトとナットのねじ山に接着剤を塗布し、固着した接着剤によりナットのゆるみを防止します。 - メリット
:施工が容易で、特に技能を必要としない。 - デメリット・注意点
:分解する際に接着剤を剝がすのが非常に手間。また、強度や耐熱温度が種類で違うため注意。
(参考:Henkel ロックタイト ねじゆるみ止め用接着剤の一般的な用途)
スプリングワッシャー/ばね座金・さらばね座金
- 原理や機構
:座金がばねの形状をしており、ばねの弾性力がボルトのゆるみを防止します。
と言われていますが、実はゆるみ止め効果が無いとも言われています。
恥ずかしながら、長年ゆるみ止め効果があると信じて特に疑いを持ったことは無かったのですが
以下リンク先の、しぶちょーさんのブログで知りました。是非ご確認ください。
(参考:しぶちょー技術研究室 “ばね座金”って本当にゆるみ止めの効果あるの?)
歯付き座金・菊座金
- 原理や機構
:座金の表面(内側、外側、または両方)に歯状の突起があり、
その歯が部材に食い込むことで回転を防止します。 - メリット
:簡単に設置でき、耐久性が高い。 - デメリット・注意点
:相手面の塗装や表面を傷つける可能性があるため、使用箇所には注意が必要です。
まとめ
ボルトナットのゆるみは、プラントエンジニアが直面する課題の中でも特に重要な問題のひとつです。
本記事では、ゆるみが発生する原因から、それを防止するための多彩な手法について解説しました。
ゆるみ止め対策には「機械的対策」と「化学的対策」があり、
それぞれの特性を理解し、状況に応じて適切な方法を選ぶことが成功の鍵です。
また、各種ゆるみ止め部品のメリット・デメリットを把握することで、より効率的で安全な締結が可能になります。
最後に、より詳しい知識を深めるための参考書籍のリンクを以下に記載しておきます。ぜひ活用してください!
👇機械やボルトナットの締結に関する基礎知識のおススメ書籍です👇
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